作家の島田雅彦さんがある漫画家について書いている。「危険視する一部の風潮に逆らってひそかに彼の作品を読むことが当時小学生だったぼくのスリリングな楽しみだった」。「危険」と呼ばれた漫画家が亡くなった。ジョージ秋山さん。七十七歳▼子ども向けギャグ漫画家から出発した秋山さんは、一九七〇年の『アシュラ』(少年マガジン連載)で作風を一変させる。飢饉(ききん)の平安末期、生きるため人を殺(あや)め、その肉まで食う子どもアシュラ。テーマは人間性や罪悪への赦(ゆる)しだが、おびただしい血と死体の山に大人たちは目をむいた▼島田さんは「スリリングな楽しみ」と書いたが、その下の小欄世代は読むのがただ恐ろしくて『アシュラ』のページはあわてて飛ばした記憶もある。それでも、やっぱりと後でこわごわ読んだ。目が離せなかった▼アシュラも『銭ゲバ』も登場人物の目に特徴がある。目の中の上の方にポツンと点のような瞳。その目は恨みがましく冷酷で非情、時に悲しく寂しく見えた。複雑な感情のこもったあの目が人間を生々しく描いた秋山作品の秘密なのかもしれない▼多作にして幅広いジャンル。漫画を極めようとした人だろう。代表作の『浮浪雲』のせりふを思い出す▼「富士山に登ろうと心に決めた人だけが富士山に登ったんです。散歩のついでに登った人はひとりもいませんよ」。高い山に登った。
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