時代に逆行した左腕(中)
10完投を可能にした数字がある。14・85。大野雄が1イニングあたりに要した球数だ。両リーグで規定投球回に達した14人の中で最も少なく、唯一15球を下回った。沢村賞の対抗馬だった巨人の菅野は15・85。ちょうど1球の差があった。
「140球投げても大丈夫な投手だというのは自分でも分かっているけど、いつもそれでは1年間もたない」と大野雄。完投した10試合の平均は117・3球と理想的で「完投しているから体が危険ということはなかった」と振り返る。
球数を少なくできた理由がある。「常にストライクゾーンで勝負できているのが要因」と自己分析。データも物語る。ストライクの割合は68・3%。規定に達した14人の中ではもちろん、今季1000球以上を投げた69人の中でトップを誇る。
四隅を狙う制球力とはまた違う。甘めのストライクゾーンに投げても安打を許さない球威があればこそ。11勝を挙げた2015年は66・4%。0勝に終わった18年は61・1%だった。復活した19年は66・7%。まさに大野雄の状態を示すバロメーターとも言える。
ただ、シーズン序盤はボール球も多かった。開幕戦は4イニングで83球。2戦目も6イニングで111球を費やした。ヒントになったのは後輩左腕の投球だ。3失点完投で初勝利を挙げた7月31日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)後にはこう明かした。
「松葉がストライク先行で攻めていくのを参考にしていきました」。球速がそれほど出なくても果敢に勝負して結果を残す姿を見て、自分のスタイルを再認識した。先輩の山井や藤井に闘争心を点火され、後輩の松葉からヒントを得て始まった驚異の10完投。もちろんそこには、耐えうるだけの肉体の秘密があった。
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大野雄10完投のヒントは後輩・松葉の「ストライク先行」 - 中日新聞
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