ロシアのウクライナ侵攻の長期化に円安の影響が加わり、農業に欠かせない燃油や肥料、飼料など輸入資材の高騰が続いている。窮地に陥っている時こそ求められるのが「温故知新」の発想だ。伝統的な農業技術に注目したい。
静岡県の「茶草場農法」は、茶草場と呼ばれる採草地で刈り取ったススキやササを茶樹の根元や畝間に敷く伝統農法で、有機質肥料となる他、土壌の保湿や保温、雑草抑制の効果が期待できる。2013年には世界農業遺産にも登録された。
埼玉県南部には「武蔵野の落ち葉堆肥農法」がある。平地林の落ち葉を集めて堆肥として畑に入れることで土壌を改良し、サツマイモなどの農産物を安定的に生産できる。17年に日本農業遺産に認定された。
こうした伝統農法は、地域の資源を有効に活用し、生物多様性などの面で評価されているが、作業の煩雑さや労力不足、化学肥料による農業の効率化によって、実践面積は減少が続く。このため、農業遺産への登録を受けて県や自治体は、作業を手伝うサポーター制度や各種の助成、実践者の認定制度などを創設し、現場を支えてきた。
一方で、化学肥料などに頼らない伝統農法がここにきて新たな価値を持ち始めた。焼き畑農業が再び評価されているのもその現れだ。畑となる草地や森林を焼くことで雑草の種子の発芽が抑えられ、灰は肥料となり、化学肥料や除草剤は不要となる。ソバなどの作物を栽培した後は、植生や地力が自然に回復するため、循環型農法として全国規模のフォーラムが開かれるなど、復活の兆しが出てきた。
13年に世界農業遺産に認定された熊本県の阿蘇地域では、約2万2000ヘクタールに及ぶ草原を野焼きし、牛の放牧に活用してきた。しかし、高齢化が進み、以前からの集落による管理が難しくなったことから、農家有志が大型農機を活用し、草を刈り取って「野草ロール」として飼料や堆肥用資材、マルチ向けなどに販売している。
輸入資材の高騰を受け、政府はさまざまな対策を打ち出す。窮地に陥っている農業現場には緊急対策が欠かせない。だが、伝統農法が今の時代に受け継がれてきたのには訳がある。原点に立ち返り、その価値を見つめ直すことも、持続可能な農業へのヒントになるのではないか。
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