旅館の設備投資といえば露天風呂付き客室、インフィニティ風呂などインスタ映えする商品で客単価を上げ、集客を増やす計画が多いですが、旅館のメインの客層である団体客がなくなり、リピーターである中高年層、女性グループも高齢化し、価値観の違う若い世代に来てもらわないと人口減の日本では経営が成り立たなくなります。将棋で先の先を読んで指すように旅館の設備投資も深読みしなければ勝てません。
世の中もSDGsが大きく取り上げられるように変化し、事業再構築補助金や高付加価値化補助金にも後押しされ、私の周りにも地域に目を向け、地域のことを考えて設備投資する経営者が現れ、光が見えます。
一方、経営を断念してこの業界から退場する人たちもあり、このままでは地域が持たないことを実感し、地域を活性化させることで持続可能性を探っているのです。
価値観の違う世代はまだ十分にお客さまとして見えていませんので、対応するには想像力と精神力が必要になります。施設造りでは地域を意識することで類型的なものからその土地にふさわしい設備投資になり、持続的な収益向上につながると思っています。「景観は資本財」「敷地に価値なしエリアに価値あり」の実践で、設計も類型的な考え方からそれぞれの地域、風土にふさわしいことが何かと考えることで新しいものが生まれます。
富山の旅館ではRCの外壁を取り払い、一枚ガラスで外部景観と連続させたときの感動、長野ではいつもと違う高さと角度から見せた渓流の景観に人の心が動かされたことが新鮮でした。景観はいつまでも古びないので持続可能な施設造りには一番重要なアイテムだと思います。
最近、私は空間に命を与えるような象徴的な照明器具を作っています。銘木の端材、針葉樹のヘギ板、広葉樹の枝をクライアントと共に集め、地元の職人技で組み立てると土着的で地域性あふれる照明器具が出来上がります。クライアントも参加して共同作業で作ると愛着も湧き、物語になります。
内装は老朽化しますが、景観、空間、明かりは持続可能で、地域性を重視した空間が新しい価値観の変化に対応しているかは売り上げという数字に結果として表れます。6月に竣工した旅館から売り上げに良い結果が出ているとメールがありましたが、コロナ禍が明け、正常に戻ってからの動きに注視しようと思います。
からの記事と詳細 ( 【道標 経営のヒント 348】旅館の設備に変化 佐々山 茂 | - 観光経済新聞 )
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