JR東海は新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われたあとで、「ずらし旅」というキャンペーンを始めた。「多くの人が集まる場所やタイミングから“ずらした”旅を」をという提案だ。実は、オーバーツーリズムの問題もあり、新型コロナ以前から分散化の取り組みがあったのだそうだ。
何かをずらせば、混雑を少しは避けられるかも?
新型コロナに関係なく一般論として、人が集まりそうな場所やタイミングを避ける、つまり“ずらす”ことで、混雑回避につながるとの期待が持てる。盆暮れ正月・ゴールデンウィークのような繁忙期には、混雑回避は無視できない課題だ。
だからといって、行きたくもないところを行先に設定するのはナンセンス。しかし、繁忙期に旅行しようとすると混雑に見舞われる三大要素、すなわち「行先」「往復の足」「泊まる場所」のうち、例え一部だけでもピークを外す工夫ができそうならば、試してみる価値はあるのではないか。
個人的な話になるが、鉄道がらみでは路線でも列車でも、「開業初日や、運行の初日・最終日は避ける」を個人的な原則としている。もちろん、人が集まりやすいタイミングを外す工夫だ。仕事で取材に行くのであれば話は違うが。
といっても例外もあり、先日に北海道で183系気動車のラストランがあったときには、人が集まりそうなのを承知で出掛けた。通常と同じ編成なら見送るつもりだったが、「間にグリーン車を3両挟んだスペシャル組成」に釣られた。
ただし、撮影場所については考えた。多くの人が集まりそうな場所に行けば、大変なことになるのは間違いなさそうだったからだ。そこで、あまり知られていない、かつ自分の好みに合いそうな場所を選んで陣取った。それでも、最終的に5~6人ぐらい集まったのだからビックリしたが。
筆者のような自営業なら日程設定の自由度が高い(こともある)が、会社や学校の関係があれば、そうもいかない。また、何かのイベントが目的ならば、日付は動かせない。だから日付は、「ずらせるならそれに越したことはない」ぐらいの位置付けか。
何をどうずらすか
まず「行先」。「混みそうな場所を避けて、繁忙期こそ、普段は見落としたりあと回しにしたりしてしまう場所に」とするか、さもなくば時間帯をずらす工夫をしてみるという話になるだろうか。あまり一般的な目的地ではないが、海上自衛隊の一般公開イベントで、朝一番を外して少し遅めに行ったところ、入門待ちの行列が短くなっていたことがある。
「往復の足」はどうか。一般的には、「朝に出発して、日中に観光したり遊んだりして、夕方に投宿。最終日は夕方か夜に帰ってくる」が基本パターン。それなら、出発時刻や帰着時刻を繰り上げたり繰り下げたりすることで、多少は混雑度が下がるかもしれない。よくよく考えたら、通勤時間帯に「ピークシフト」がいわれるのと同じだ。
といったところで思い出したのが、クルマで日帰りスキーに行く場面。早起きして出掛けて、朝一番から午前中だけ滑って、昼には離脱して帰途につく。こうすると帰りの時間が早まるので、相応に渋滞を避けられたことが多い。
また、現地での移動も、ポピュラーな手段を外した選択肢があれば検討に値する。繁忙期に京都市内に行くとバスの混雑が大変なことになるらしいが、「それではバス以外の選択肢はないか?」と。そういう類の話だ。
では「泊まる場所」はどうか。何かのイベントがある場所、あるいは有名観光地の近隣なら、繁忙期に宿泊施設の予約を取れなかったり、予約できても混雑したりするのは当然だ。では、少し外れた場所ならなんとかならないか。
といって、京都で取材の仕事があったときに、京都市内だけでなく、近隣の大津まで検索の網を拡げたことがある。また、オーストラリアのアヴァロン・エアショーに行ったときには、会場最寄りのジーロングではリーズナブルに泊まれる場所が見つからず、アヴァロンとメルボルンの中間、ウェロビーに宿を見つけた。クルマで移動していたがゆえの自由度の高さだが。
交通機関は人気が出やすい列車や路線を避けてみる
「往復の足」について、もう少し話を続けてみる。
新幹線では「のぞみ」や「はやぶさ」みたいな速達列車に人が集まりがちだから、それを避ける手が考えられる。ことに東海道新幹線では、「こだま」の本数がそれなりにあるし、やたらと待避する割には速い。待避が少ない早朝・深夜の「こだま」なら、さらに速い。
そして、各駅に停車する列車なら長距離の利用者は少なくなるだろう。それはすなわち、入れ替わりが多いということだ。すると、乗車の時点で混んでいても、途中で空席ができる可能性が上がるかもしれない。
ゴールデンウィークの特徴として、「青春18きっぷ」設定の有無がある。春休み・夏休み・冬休みは設定があるが、ゴールデンウィークにはない。これは、主要幹線の普通列車における旅客流動に、多少は影響するかもしれない。
飛行機は、鉄道と比べると運賃がダイナミックに変動する。もちろん、競合がない路線や、需要が多い路線・期間の運賃は跳ね上がるのが通例だ。ところが同じ時期の同じ方面であっても、路線によって意外と価格差が生じることがある。
すると、目的地ないしはその近隣に直行する路線ではなく、少し離れた別の場所に向かう路線でもっと安い、あるいは空いている便がないか、とあたってみる価値はあるかもしれない。個人的には、北海道方面で何回か成功経験がある。ただし北海道の場合、陸路の移動を内地と同じ距離感覚で考えると大変なことになる。
おわりに
ここまで書いてきた“ずらす”話が、実際にどこまで通用するかというと、それは場合による。「こうすれば必ず混雑を避けられる」なんていう銀の弾丸は、そう簡単には見つからないものだ。
とはいえ、旅行を構成する諸要素の一部分だけでも混雑を避けられれば、意外と気分が軽くなるのではないだろうか。
からの記事と詳細 ( 【井上孝司の「鉄道旅行のヒント」】繁忙期の混雑を避けるには ... - トラベル Watch )
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