戦争や感染症、気候変動がグローバルな規模で影響を及ぼす時代。日本はかつてないスピードで人口減少が進み、官民を問わず担い手不足が深刻になっている。霊長類学者で、ゴリラ研究の第一人者として知られる総合地球環境学研究所長、山極寿一さん(71)は「日本にとってはチャンスだ」という。どういうことなのか。山極さんに寄稿してもらった。【菅沼舞】
<目次>
・都市生活は本当に幸せか
・移住者を受け入れる知恵
・物の価値をマーケットから取り戻す
・食料自給率を高めるには
・戦争は人類の本性ではない
・シェアとコモンズを基本とする社会
・「あいだ」を認める日本の思想
・新たなジャポニズムの到来
都市生活は本当に幸せか
現代で解決困難な「無理ゲー」と言われている課題は、人間の本質を見誤っていると思えるものがいくつもある。例えば、日本は人口縮小で限界集落がいくつもでき、人の住めない地域が広がっていく危機にあるとされる。
食料の自給率が40%を割り、他国からの食料輸入に頼らなければ日々の暮らしに困るとされる。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻、ハマスとイスラエルの軍事衝突は武力での解決しか道はないとされる。
本当にそうだろうか。本来の人間のあり方を見据えれば、違う見方や解決策が浮かぶはずだと私は思う。
現在、地球の人口の半分以上が都市に暮らしていて、日本も東京一極集中が著しい。
しかし、都市はもともと人が住むのに適さない湿地や海を埋め立てて造られており、自然物を排除して人工的なインフラによって整備されている。
下水道や電力のシステムが至る所に配備され、維持するためのコストが高い。住居は密閉されているので冷暖房の設備が必要で、巨大なビルや工場には膨大な電力を供給しなければならない。
一方、自然が豊かな地方は森林や川の流れなど自然の力を利用できるので暮らしにそれほどお金がかからない。ビルの谷間を歩くより、自然の中を散策するほうがいろんな命に出合える。
地方には仕事がないし、遊ぶ場所も乏しいので、若者が出ていくと人々は言う。しかし、都市に本当に胸を躍らすような仕事があるのだろうか。
毎日決まりきった仕事をしに満員電車に乗って会社へ通い、みんな同じような住宅に寝起きし、わずかな休暇を駆け足で過ごす。
こんなことを続けていたら結婚も子どもを作ることもできなくなる。事実、少子化が最も著しいのが東京である。都市の仕事の大部分はやがてAI(人工知能)に置き換えられてなくなる。失業すれば、さらに低賃金の生きがいの感じられない仕事しかなくなる。
移住者を受け入れる知恵
人類は進化史の99%以上を原野で暮らしてきた。自然の変化を五感で素早く感じ取ってその恵みを利用し、災…
からの記事と詳細 ( コモンエイジ:「平和のヒントは狩猟採集時代」 霊長類学者・山極寿一さん寄稿 - 毎日新聞 )
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