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Friday, January 3, 2020

スマホ・タブレット時代における“漫画のコマ割り” 来るべき新しい表現を考察(リアルサウンド) - Yahoo!ニュース

■何十年も前に完成しきった「コマ割り」

 漫画とはコマとコマの連なりによって表現された物語のことである。などと書くと、何をいまさらと思う人もいるだろうが、このコマとコマの連なり、すなわち「コマ割り」こそが、隣接したほかの表現ジャンル、たとえば映画や演劇、文学といったものにはない、漫画だけがもっている独自の手法なのだということはあらためて強調しておきたい。

 では、その漫画のコマ割りとはどういうものかと考えたとき、戦後のいわゆる貸本の時代からいまにいたるまでさほど形を変えていない、ということに気づいて少なからず驚いた。そう、この数十年のあいだ、貸本、月刊誌、週刊誌と、シーンを牽引する媒体の形は次々と変わっていったが、漫画(この場合は「ストーリー漫画」をさす)のコマ割りはいつの時代も見開き単位での「見せ方」が考え抜かれたものであり、その点では昔から大きな変化はないといえるのである。

 具体的にいえば、紙の本を開いた状態(見開き)に、数段(3~4段になることが多い)で組まれた複数のコマをバランスよく配置し、右ページ上段の1コマ目から左ページ下段の最後のコマに向かって読者の視線を誘導していくというのが、日本の漫画の基本的なコマ割りの形である。

 無論、そのコマの中に描かれる絵的な表現は、貸本の時代と比べ現代の漫画は驚くべきレベルにまで達している。また、毎回ある程度物語を読み切らせることが望ましい月刊連載と、逆に毎回「引き」で終わることが多い週刊連載の漫画ではその「語り」のテンポはかなり違うものになっているだろう。

 だがことコマ割りの面に関していえば、ある時期から大ゴマの多用や、タチキリを使った表現など派手めな演出は加わったものの、基本的にはこの数十年間、上記のような見開き単位でデザインされた定型を守り続けている。これは別に悪いことでも停滞でもない。むしろ紙をめくって漫画を読ませる完璧な形を、何十年も前に作りあげた先人たちに頭が下がる思いだ。

■スマホ・タブレットにあった「コマ割り」とは?

 ただ、ここで気になるのは、その紙の本におけるコマ割りの定型は、スマホやタブレットなどで漫画を読むことが多くなってきたいまでも有効なのか、という問題だ。誤解を恐れずに個人的な意見をいわせていただけば、答えはNOだ。たとえばスマホでは(通常の設定では)漫画の片ページだけが表示されることが多く、その場合は、見開きで考えられたコマの配置は意味をなさなくなるし、なんといっても左右ページに股がって描かれた図像は分断されてしまう。タチキリのコマについても、ややアンバランスなヴィジュアルになってしまう。

 ではなぜそういうふうに、ものによっては片ページだけの表示でもよしとされているかといえば、現状ではたとえウェブのみで連載される新作であろうとも、「最終的に紙の単行本にする」ということを前提にして多くの漫画が描かれているからだ。その流れに私などは疑問を感じるわけである。なぜなら、印刷した紙をめくって読む行為と、端末の画面をスクロールないしタップさせて読む行為は、目に映るヴィジュアルだけでなく手触りも含め、まったく違う読書体験なはずだからだ。当たり前だが、媒体の形が変われば、表現スタイルも変わるべきだ。

 しかし当面は、電子書籍の可能性に期待しつつも、紙の本の製作・販売を優先した漫画界の現状が大きく変わることはないだろう。だからそれを踏まえた妥協案があるとすれば、1ページ単位で読んでも違和感のない、タチキリや見開きの効果を使わないコマ割りにすることだ。これは現時点でも、時代の流れに敏感な漫画家は意識的に行なっているものと思われる(私の知人では粟岳高弘氏がそうだし、おそらく元々は映画のフレームを意識してのコマ割りだろうが、皆川亮二氏のコマ割りも参考になるだろう)。ただ、やはりそれはあくまでも現状を見ながらの妥協案であり、決して「新しい表現」ではあるまい。

 いずれにせよそう遠くない将来、紙の漫画は消滅しないまでも大幅に縮小され、電子書籍が「本」の主流となるだろう。そうなった時、「本」という概念だけでなく、我々が「漫画」と呼ぶものもいまあるものとは少々違う形になっているかもしれない。

 新しい媒体に合った新しい漫画のコマ割りというものは必ずある。縦スクロールの表現を模索している漫画家たちもいるが、日本においてはまだまだ定着しているとは言い難い。むろんこのまま黙っていても、新しい表現というものは私のようなアナログ人間が消え去ったのち、つまり、紙の本にまったく思い入れのない新世代の漫画家たちが現れた時に自然と生まれるだろうし、それ以前に新しい媒体の特徴を活かした新しい表現をしたい、と思うのがクリエイターの本来あるべき姿ではないだろうか。

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