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Thursday, March 26, 2020

整形アイドル轟ちゃんが“整形テーマ”の漫画に感じたこと「改造、サイボーグ心無い声にも…」:紀伊民報AGARA - 紀伊民報

 美容整形をテーマにした漫画『Dr.クインチ』(集英社 グランドジャンプ連載中)が注目を集めている。外見とともに心も癒やす美容整形の医師・権藤の活躍を描く物語で、SNSでは「泣ける」「騙されたと思って読んでほしい」などの声が。そこで、自身の整形を公言し、登録者数39万人の人気YouTuberの整形アイドル轟ちゃんに、経験者だからこそ感じた漫画の感想や“容姿”や“美”についての現代における価値基準の変化について聞いてみた。

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■患者の心境も細やか、整形経験者だからこそ感じるリアル

腕は超一流だが口の悪さも超一流の天才外科医・権藤弓一郎が主人公の『Dr.クインチ』。その特徴の一つは“リアルさ”で手術はもちろん、施術してから回復するまでの期間=“ダウンタイム”も生々しく描写されており、“リスク”をしっかり描くことで他と一線を画している。整形アイドル轟ちゃんも同書について「非常にリアル」と語る。

「患者さんの整形を決断する理由が“お姫様になりたい”などではなく、“No1キャバ嬢になりたい”“処女膜再生して彼に処女だと思わせたい”など、誰もがいつかは持つかもしれない欲望から発されていることが、整形している身としては“分かる”の一言です」

 轟ちゃんは、瞼、おでこ、鼻、輪郭……ここまで行った整形の合計は1000万円を超える。中学時代に「ブス」とからかわれた経験から「“普通”になりたい」という強い意思のもと整形を決意する。

 そんな轟ちゃんが注目を集めるきっかけとなったのがYouTubeだった。「美容整形のダウンタイムの間は顔が見にくく腫れ上がり、それが2週間以上も続く。これをYouTubeで公開している人はいない。私はそれをすべてさらけ出そう」。これは決して“魔法”ではない美容整形が持つ現実、そしてその“リスク”を警鐘するためでもあった。

「整形は“騙している”とか“嘘をついている”と捉えられることが多い。それは仕方ないことだとも思います。『Dr.クインチ』でも、豊胸手術する女性のエピソードがあります。彼女は整形自体に後悔や罪悪感はない。ですが豊胸の事実を知らない彼やその仲間が、何の気なしにグラビアタレントについて“ニセ乳”かと議論する姿を見る。そして“胸が痛い”と心でつぶやく。このヒロインの心情は患者目線で伝わってきました。エピソードの一つ一つがリアルなのです」

■美容整形は“魔法”ではない。「サイボーグ」「改造」世間からの心無い言葉も…

 同作の中で描かれたダウンタイムでの患者の顔の腫れ具合も「本当にこんな顔になる」と轟ちゃん。彼女の場合は喉の奥の方に血がゴボゴボとたまり呼吸が苦しい状態にも陥ったという。鼻からチューブを挿れ、血を排出するなどの治療も。昔のドラマや映画では、顔をぐるぐる巻きにした患者の包帯を取り、鏡を見せ「今日からこれがあなたの顔だよ」などというシーンがよく見られたが「そんな“魔法”みたいなことあり得ない」という。

「この作品でも、容姿を綺麗にしてもコンプレックスまでは治らないことが描写されていますが、私もそう思います。整形して人から「可愛いよ」と言われても“コンプレックス“はなくならない。私の場合はYouTubeを始めたり、イベントなどいろんなお仕事をさせていただいて、顔意外のところでメンタルケアが出来たから薄まっただけ。でも、また新たなコンプレックスが顔を出すかも知れない。整形を過剰に“可愛くなれる魔法”だと思っていると、その後の事実を、その後の自分を受け入れられなかったりする。私はYouTubeでそのストーリーを見せたいと思いますし、この漫画にもそれが描かれています」

 今も自身のYouTubeのコメントに「サイボーグ」「改造」「整形して可愛くなっても内面が伴わなければ捨てられますよ」などのネガティブなコメントがつくこともあるというが、轟ちゃんはこう考えるという。
「褒められれば“1.6”とか自分が増えたような気がする。逆に“ブス”などと言われると“0.8”まで自分が減った気がする。でも、そうじゃないと思うんです。どんなネガティブなことを言われても自分という“1”が“1”以下にはならない。 “1”は“1”からは減らないんです。そう思うともっと楽な生き方が出来るんじゃないかな」

■SNSで「可愛い戦争」は激化中?自分の価値観を大切に

写真加工アプリの普及により、自身を“盛って”可愛く見せることが、当たり前となっている。そんな現状に、轟ちゃんは「美容整形を公言することも珍しくなくなりました。それに伴い、美容整形や加工アプリ、すっぴんとはまるで違う“メイク”に対する偏見の目は少しずつ減っているように思うのですが…。ただ、皆がスマホを持つ時代になり、SNSなどで人の容姿について批難する場は増えてしまったように思います」と話す。

 轟ちゃんの自著『可愛い戦争から離脱します』(幻冬舎)から言葉を借りれば、価値基準が多様化した現在であっても、SNSの定着で「可愛い戦争」は激化中。多様化の持つ“優しさ”と、匿名性を利用した“攻撃”が、混沌と混ざり合っているのが現在ではないかと分析する。

「プリクラ時代にあるインフルエンサーの方の投稿がバズったことがあって…。『プリクラ代400円。400円払って可愛くなって何が悪い』という内容なんですが。つまり、自分がどう写ろうと“自由”ということです。加工が好きな人も嫌な人もいる。美容整形も同じ。それは“自由”なんです。そこでお互いを“攻撃”しなければ、『可愛い戦争』は沈静化するのではないでしょうか」

 轟ちゃんは「みんなそれぞれが、好きな“自分”でいればいい。その“自分”で意見をぶつけ合わせる必要もない」と前を向く。世の中には無数の価値観があり、SNSでその価値観で“戦争”になっている惨状もよく見られる。「可愛い戦争」だけでなく、世の中の“醜い”争いの大半がなくなる、そんな未来を切に願う。

(文/衣輪晋一)

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