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Thursday, April 23, 2020

50巻越えても終わらない漫画、なぜ増えた? 連載の長期化問題を考える - リアルサウンド

 いきなりだが、まずは質問から始めさせてほしい。あるとき、あなたが、(たとえばSNSで評判になっているのを見るなどして)それまで知らなかったある漫画に興味を持ったとする。その次にあなたがとるのはいったいどういう行動だろうか。おそらくは、AamazonやWikipediaなどでその作品を検索してみるのではないだろうか(私だってそうする)。そしてその検索の結果、お目当ての漫画の単行本が現在50巻以上出ており、しかもまだ終わっていない、ということを知ったらどう思うだろうか。

 たぶん、ほとんどの人の気持ちはその段階で萎えるはずだ。もちろん、巻数が多ければ多いほど読書欲が刺激されるという人もいるかもしれないが、それはやはり少数派だろう。昔から漫画が好きで、その好きが高じて漫画の編集者になった私でさえ、すでに50巻以上あるうえにまだ終わっていない、と最初からわかっている作品に新たに手を出そうとは思わない。

完結する前に大人になってしまう

 だが実際は、年々、(角が立つので具体的な名前は挙げないが)各漫画誌の看板作品やヒット作の「尺」は長くなっていく一方だ。50巻どころか、シリーズ累計で100巻を越えている「終わらない作品」も少なからず存在する。これはどういうことかといえば、簡単にいえば、編集部としては出版不況の現在、一度当たった作品をすぐに終わらせるのはもったいない、ということだろう。その漫画家が次もまた同じような売れる作品を描いてくれるとはかぎらないし、保身、というのはいいすぎかもしれないが、漫画家のほうでも似たようなことを考えているのかもしれない。

 だが、長期的に考えた場合、それは雑誌や漫画家にとって得策なのだろうか。誤解を恐れずにいわせてもらえば、50巻以上続いている漫画に新規の読者がつくことはまずないだろう。たとえば『こち亀』のように、どの巻を買っても楽しめる読切形式の作品は別だが、いくらおもしろそうだといっても、いきなり50巻ものストーリー漫画に手を出すというのは、やはり普通の読者(消費者)の感覚としては、時間的にも金銭的にもなかなかハードルが高いように思える(書店の棚にも、全巻並べづらい)。

 たとえば、『電ファミニコゲーマー』で公開されている「漫画はこの先どうしていくべきか?」というテーマの座談会の記事(参考https://news.denfaminicogamer.jp/interview/191227f)で、元『週刊少年ジャンプ』編集長の鳥嶋和彦氏(現白泉社代表取締役会長)はこういっている。鳥嶋はまず、「同じ漫画を10年も20年もやっちゃダメ」と厳しい“持論”を述べ、「週刊誌って年間50冊でしょ。50話だよね。ということは、10年間やったら500話だ。それで完結しない話って何なの? 基本的に1ヵ月に4週じゃない、週刊誌は。だったら4週で1エピソード、サイクルで終えて行かなきゃいけない。せめて2ヵ月だよね。それが何ヵ月も続くと、新しい読者が入ってこれなくなる。漫画の良さって、誰でも読める、誰でも入ってこられる、いちばん安価な娯楽だから。それが途中から入っていけない形になってるのは、ビジネスとしてマズい作り方だと思う」と続ける。

 同感だ。たしかに、「いま」だけを考えるなら、売れている作品をいつまでも続けるというのは悪くないやり方だろう。しかし、繰り返しになるが、長期で考えたらそれは雑誌にとっても、漫画家にとっても為にならないような気がする。なぜならば、読者というものは常に新しいものを求めているし、当たり前だが、世代は常に交代しているからだ。青年漫画は別かもしれないが、少年漫画や少女漫画の場合、リアルタイムの読者は成長するにつれ、自然とそれらを読まなくなるものである。つまり、10年も20年も続いているあまりにも長い物語(終わらない漫画)については、多くの人々がその結末を知らないまま大人になってしまうのだ。それは読者にとっても、作品にとっても、不幸なことではないだろうか。自分に照らし合わせて考えてみても、子供の頃に感銘を受けた漫画は一生モノだ。そしてそれらは当然、適度な長さで完結している(だからこそ、心に残っている)。

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