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Sunday, April 5, 2020

軽やかに生きる姿にヒント 向田邦子の魅力発信(写真=共同) - 日本経済新聞

作家の向田邦子さん(1929~81年)が幼少期を過ごした鹿児島市にある「かごしま近代文学館」は、工夫を凝らした企画展を毎年のように開き、向田さんの魅力を発信し続けている。若者の来館も増えつつあり、学芸員の井上育子さん(44)は「働く女性の先駆けで、繁忙な毎日を送りながらも軽やかに生きる姿に人生のヒントをもらう人も多いのでは」と語る。

自ら手がけた向田邦子さんの企画展の歴代ポスターを紹介する、かごしま近代文学館の井上育子さん(2019年12月、鹿児島市)=共同

自ら手がけた向田邦子さんの企画展の歴代ポスターを紹介する、かごしま近代文学館の井上育子さん(2019年12月、鹿児島市)=共同

テレビドラマ「寺内貫太郎一家」の脚本やエッセーなど数多くの作品を残した向田さんは、東京で生まれ、10歳で鹿児島市に移住。約2年間、戦前の穏やかな時を家族と共に過ごした地を「故郷もどき」と表現し、51歳で飛行機事故で亡くなるまで生涯愛し続けた。

文学館では作品や原稿のほか、向田家から寄贈された遺品など約1万2千点を保管する。向田さんの資料館としては母校・実践女子大の「向田邦子文庫」(東京都)と並び国内最大級だ。

開館翌年の99年からほぼ毎年開催している企画展では、作品と愛用の器や衣服などを組み合わせ、料理やファッションを楽しんだ生き方を紹介。生誕90周年の昨年開いた特別企画展には、27日間の期間中に国内外から千人超が詰めかけた。

20代の頃から企画展を担当する井上さんは、どの世代でも楽しめるよう毎回頭をひねる。特に「ポスターは全ての入り口」と、女性誌や海外旅行で集めたチラシを研究し、内容を知らなくても「ジャケ買い」したくなるような、目を引く一枚をこだわり抜いて作る。

向田さんの魅力は「仕事ができる上に、親しみやすい。おいしいものや高価な器をご褒美にしながら、気負わずに仕事を楽しむところ」で、働く女性の一人として刺激を受けるという。「毎年違う人が企画している」と思われるように新しい発想を展示に盛り込み、作品と読者の懸け橋になりたいと願う。

〔共同〕

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