ノーベル文学賞作家による硬派な戦争ノンフィクション作品が漫画化され、十万部を超える異例の大ヒットとなっている。『戦争は女の顔をしていない』(KADOKAWA)。ベラルーシ出身のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさん=写真=による同名の原作は、旧ソ連の元女性兵士から聞き取った記録だ。出版関係者も驚く爆発的な売れ行きで、新たな「戦争物」のジャンルが生まれつつあるようだ。 (出田阿生)
「原作を難しく感じる人に、入り口をつくれたらと思った。戦争漫画やアニメの定番は『はだしのゲン』や『火垂るの墓』。その次を出したかった」。フリー漫画編集者の荻野謙太郎さんはこう語る。昨春、ウェブの漫画サイト「コミックウォーカー」で配信を開始。今年一月に第一巻が出版されるとたちまち店頭から本が消えた。
着想を得たのは二〇一六年公開のアニメ「この世界の片隅に」(こうの史代原作・片渕須直監督)のヒット。戦時下の広島で暮らす女性が主人公で、戦記物とは違う「日常の延長線上」の戦争を描く。
アレクシエーヴィチさんも「女のものがたり」を通じて戦争の実相を浮かび上がらせる。第二次世界大戦で、ソ連では百万人超の女性が従軍。だが戦後は「人殺し」などと白眼視され、口を閉ざしてきた。一九八四年に発表された原作には飛行士や狙撃兵など五百人以上の言葉が並ぶ。冒頭には「これまで戦争について知っていることはすべて『男の言葉』で語られ」「女たちの戦争は知られないまま」だとある。
エピソードは荻野さんと作画担当の漫画家小梅けいとさんの二人で厳選。ソ連やロシアの軍隊や習俗に詳しい漫画家速水螺旋人(らせんじん)さんが監修を担当し、わずかな文字から情景を描きおこすための助言をした。こんな場面も漫画で再現される。
「私たちが通った後には 赤いしみが砂に残った」
毎日三十キロの行軍。負傷兵の脱脂綿も欠乏する中、生理用品の支給はない。乾いた血は刃物のように皮膚を切り裂く。川岸に着くと敵機の爆撃が始まり、男たちは必死で物陰に隠れるが、女性兵士はわれ先に体を洗おうと川に飛び込む。「数人の女の子たちはそのまま水の中で死んでしまった」
さらに別の女性は、射撃手をしながら最も恐ろしかったのは「死」ではなく、「男物のパンツ」をはかされたことだと語る。小梅さんは「普通の人々から、人間の尊厳をいったん剥奪して『兵士』にするのだと感じた」という。
短い証言はわずか二行ほど。速水さんは「言葉の断片から、生身のリアルが伝わってくる」と語る。たとえば元狙撃兵の、「あまりに子どもで、戦争中に十センチも背が伸びたほどよ」という言葉もそうだ。
同書には「反戦を訴えた本だ」という感想もあれば、「戦争賛美だ」という声も寄せられているという。荻野さんは「この作品はどちらでもない。新しい視点で、戦争の実像に近づいてもらえたらと思います」と語る。今もウェブサイトで連載を続けており、第二巻の刊行も予定している。
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「戦争は女の顔を~」漫画でヒット 「ゲン」「火垂る」に続く定番に - 東京新聞
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