漫画界で「再デビュー」が盛んだ。引退後30年以上たつ漫画家の新作が話題になり、ボツになった企画を復活する賞が活況を呈している。多様なキャリアを評価する発想が背景にある。
「思ってもみないこと。私、もう60歳過ぎているんですけどいいんですか? という気持ちでした」。今年2月、32年ぶりに漫画を商業出版した笹生那実(65)は「再デビュー」を果たした驚きをこう振り返る。
1973年、高校3年生のとき、月刊少女漫画誌でデビューした。少女漫画が新しい表現を次々生みだしていた時代。自作だけでなく「ガラスの仮面」の美内すずえ、「はみだしっ子」の三原順ら人気作家のアシスタントも務めた。
子育てとの両立が難しくなり、32歳でいったん引退したが、今年、エッセー漫画「薔薇(ばら)はシュラバで生まれる」(イースト・プレス)で久々の復帰を果たす。作品はかつてのアシスタント時代の奮闘記だ。発売後すぐに増刷し、現在5刷と版を重ねる。
同人誌から発掘
原型は、2017年に出した同人誌だ。95年に亡くなった三原の追悼文集を内輪向けに作ったのをきっかけに、40代で同人誌活動を始めた。それから20年、わずか10ページのアシスタント経験記が編集者の目に留まり、一冊の本になった。
もっとも笹生は「同人誌で未完の作品を完結させるまでは、次の商業出版は考えられない」という。同人誌というと、かつてはアマチュアや二次創作のイメージが強く、商業出版へのステップとみられていたが、時代は一変した。「自由な発想と表現方法が試せる場として、プロや元プロが同人誌即売会にたくさん参加している」と担当編集の小林千奈都氏も指摘する。そんな活況の同人誌カルチャーから、一度は表舞台を去った才能が発掘された。
65年から続く老舗の少女漫画誌「別冊フレンド」(講談社)は今年、他誌でデビュー済みの作家を対象とする「Re☆デビュー大賞」を創設。第1回は2人が佳作を受賞し、同誌への掲載が決まった。
無気力な高校生と先生の交流を描く「ばかでまじめでめんどうなキミは」で受賞した東澤まほろ(20)は3年前、高校2年生でデビューした新鋭だ。デビューした雑誌で読み切り作品を発表してきたが「王道の少女漫画が描きたい自分と、雑誌の傾向にずれを感じるようになった」と明かす。現状を打破したいと、別フレの新人賞に応募したところ、リデビューへの応募を促された。「まっさらな状態でやり直したかった」と受賞に声を弾ませる。
別フレ編集部の齋木淳史氏は「ウェブを中心に漫画の発表媒体は増えた。描き進めるうちにミスマッチに悩む作家もいる」と話す。同賞がそうした作家の受け皿になればと期待する。
双葉社が19年に2度にわたり実施したのは「プロのためのセカンドオピニオン賞」。プロ漫画家が他社でボツにされた企画を募り、再評価する。第1回には100を超す応募があり、10作以上を採用。受け付けからわずか2カ月で連載がスタートした作品もある。
ボツ作品にも注目
特徴は、漫画編集者全員が応募作に目を通す点。漫画アクションの三田村優編集長は「投稿や持ち込みは最初に応対した人がジャッジの全て。複数の編集者が読むことで、多様な意見が出てくる」と話す。「相性やタイミングの問題でボツになってしまう作品がある。そのミスマッチをなんとかしたい」
漫画評論家で東京工芸大教授の伊藤剛氏は「再デビュー」の背景として「新人賞を取ってから連載までに時間をかけるようになった。その一方で、発表媒体は増えている」ことを挙げる。漫画を発表する場は多様化し才能がひしめく一方で、埋没する人もいる。
出版科学研究所によると、紙と電子を合わせたコミックの販売額は19年に前年比12.8%増の4980億円と2年連続で増加した。「鬼滅の刃」(集英社)のブレークとともに、約3割増となった電子コミックの伸びが大きい。
リタイアしたりくじけたりしても、チャンスは何度もある。そんな発想で才能を見いだす仕組みがコミック市場を支えている。
(桂星子)
[日本経済新聞夕刊2020年8月11日付]
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