「5階級王者」が、WBA、IBF世界バンタム級統一王者井上尚弥(27=大橋)の勝利に太鼓判だ。
WBA同級2位モロニー(オーストラリア)との防衛戦(10月31日、米ラスベガス)を前に、昨年11月に井上と対戦した元世界5階級王者ノニト・ドネア(37=フィリピン)が日刊スポーツのインタビューに応じ、「井上有利」を予想した。主要メディアの19年年間最高試合に選ばれた死闘を通して感じた井上の強さ、底知れぬ可能性を語った。【取材・構成=奥山将志】
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井上を苦しめたドネアだからこそ分かることがある。コロナ禍で、通常とは異なる雰囲気で臨む実力者のモロニー戦。米プロモート大手トップランク社との契約初戦のファイトマネーは、軽量級では異例の100万ドル(約1億1000万円)に設定された。井上にとって、重圧がかかる要素は少なくない。それでも、ドネアはよどみなく言った。
ドネア モロニーとはスパーリングをした経験があるが、井上はそのレベルではない。モロニーは良いジャブを持っているが、問題なく、井上が勝つと思う。
井上が今後主戦場とするだろう本場ラスベガス。その地で暮らす歴戦の王者に、世界の主要メディアで年間最高試合に選出された1年前の激闘を、あらためて振り返ってもらった。
19年11月7日。さいたまスーパーアリーナは2万人の熱狂が渦巻いた。9回、ドネアの右ストレートを顔面に受けた井上が、プロ転向後、初めてぐらついた。目を負傷し、視界もぼやける。だが、11回に左ボディーでドネアを倒し、勝利をたぐり寄せた。12ラウンドの熱戦を通し、井上の引き出しの豊富さと、潜在能力に、世界が驚かされた。
ドネア まずは井上のタフさは想像を超えていた。自分は持てる力をすべて出した。彼は眼窩(がんか)底を骨折したが、倒れなかった。間違いなく、キャリアで最強の相手だった。
スピード、テクニック、パワー。ボクサーの強さを測る指標は1つではない。「オールラウンド」と評される井上について、ドネアもまた、その総合力の高さに触れた。
ドネア 彼は、すべてにおいてハイレベルなものを持っている。そして、頭が良い。自分が何をすべきかを分かっている。攻める時なのか、守る時なのか。ここはスピードでいくのか、パワーでいくのか。弱点がないから、こっちが考えさせられる。やっていて難しくなっていくのを感じた。
技術的には、基本の忠実さが印象深かったという。
ドネア 井上は、ボディーを打つと必ず左でカウンターを合わせてくる。そして、パンチを出せば、1つの場所にとどまらずに、常に動いている。中に入って攻めれば、すぐに出る。そして、出る時も、決まった方向ではなく、いろんな方向に下がる。そこを徹底してやり抜くことが彼の土台になっているのだと思う。
井上にとって、モロニー戦は、本場ラスベガスで初の試合となる。「怪物」から「MONSTER」へ-。ドネアは、1つのパンチが、未来を切り開く鍵になるのではとも予想した。
ドネア 彼の左ボディーは普通の人には打てない特別なパンチだ。アッパーで気をそらせ、体の回転、距離感、スピード、タイミング、打つ場所、すべてが完璧に打たれたあのボディーショットは我慢できない。右があれだけ強くて、左にもあのパンチがある。自分にとって、左フックがそうだったように、今後、「井上=左ボディー」となっていく可能性もあると思う。
かつて、パッキャオがアジアから世界の頂点に駆け上がり、その背中をドネアが追った。そして井上が続く-。「第2章のスタート」と位置づける一戦のカウントダウンが迫る。
◆テレビ放送 WOWOWは11月1日午前10時半からWOWOWプライムで生中継。
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