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Friday, February 5, 2021

ヒロインのヒントは宮崎アニメのあの有名キャラクター? 「村」シリーズ第2弾「樹海村」の清水崇監督 - 時事通信ニュース

2021年02月06日12時00分

撮影は猛暑下で行われた。現場は溶岩地帯のため足元はでこぼこ。「そこに新型コロナが加わり、三重苦でした」と言う清水崇監督=東京都内

撮影は猛暑下で行われた。現場は溶岩地帯のため足元はでこぼこ。「そこに新型コロナが加わり、三重苦でした」と言う清水崇監督=東京都内

 大ヒットした「呪怨」シリーズなどでホラー映像作家として揺るぎない地位を築いたが、子供の頃は意外にもホラーは苦手なジャンルだったという。「『そんなものを見たら自分はどうなるの?』という不安感や『夢に見たら怖い』との思いがあった」と映画監督の清水崇は振り返る。

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 最新作「樹海村」は富士の樹海に存在するとされる謎の集落にまつわる恐怖を描く。新型コロナ禍の中、昨年公開され大ヒットした「犬鳴村」に続く「恐怖の村シリーズ」の第2弾。作品からは人間以外の存在への畏怖や社会のアウトサイダーを安易に排除しようとする心の闇も浮かび上がる。
 物語はインターネット情報などで広がった都市伝説がベースのオリジナル(脚本は清水監督と保坂大輔の共同執筆)。封印されていた謎の小箱「コトリバコ」の発見をきっかけに、主人公姉妹(山田杏奈、山口まゆ)の近辺で奇怪な出来事が起こり、二人は富士山ろくにあるという「樹海村」の魔に引き込まれていく。
 企画は興行収入14億円を上げた前作の公開直後からスタート。スタッフの誰からともなく「今度は樹海で」との声が上がり、まずはシナリオハンティングのために富士の樹海に足を運んだ。樹海には暗いイメージもあるが、「実際には空気がきれいで緑も豊かだった」と清水監督。「すがすがしい」とさえ言える雰囲気は、神秘性こそ感じさせるものの、ホラーにはむしろ不似合いだと思ったという。
 そんな困難を背負っての始まりだったが、人間と異界をつなぐ不気味な「コトリバコ」を中心に配して物語を構築。「カリガリ博士」などのドイツ表現主義映画や、異様な世界観で今もカルト的な人気を誇る石井輝男監督作品なども意識し、現実と絵空事が混在した描写で独特の世界を作り上げた。
 山田演じる妹の響(ひびき)のキャラクターは宮崎駿監督のアニメーション「風の谷のナウシカ」のヒロイン、ナウシカのイメージがベースになっているとか。監督が何を狙ったのかは、ぜひ劇場の大スクリーンで確認してほしい。
 物語には、2011年の東日本大震災で、地震や津波に翻弄される日本社会を見た時に感じた「自然の脅威への畏怖の念を失った人間のさま」を投影したという。多くのホラー映画で語られる「一番怖いのは人間」とのテーマは受け入れつつ「その先には、われわれが予想もできない自然の脅威がある」との清水監督の思いは、まるで生き物のようにうごめいて人間をのみ込む樹海の描写からも読み取れる。
 さらに映画のタイトルでもある樹海村は、異形や弱者を排除する人間の差別意識が生んだ存在であることが劇中で明かされる。ここで描かれる「ムラ社会的な閉鎖性」は、新型コロナを背景にした「自粛警察」が登場したり、ウイルス感染者やその近親者が差別されたりする現代社会の姿にも重なってくる。
◇「ホラー映画の可能性は無限」
 清水監督は大学では演劇を専攻し、小栗康平監督の「眠る男」のスタッフとして映画業界のキャリアをスタートさせた。今作を配給した東映のVシネマで手掛けた「呪怨」シリーズが評判を呼び、一躍ホラー映画の旗手に。その後もホラーを中心に海外資本の作品も手掛けるなど幅広い活躍を続ける。
 ホラー物の原体験は小学生の頃に見たテレビアニメ「妖怪伝 猫目小僧」(楳図かずお原作)。「テレビに映るとすぐに消して外に遊びに行っていた」。テレビのSF映画特集でホラー映画のダイジェストがたまたま流れると震え上がるような少年だったという。
 ところが「ホラー映画なんて怖いだけ」と思っていた清水少年に中学時代に変化が訪れる。ホラー映画の金字塔として名高い「ゾンビ」(ジョージ・A・ロメロ監督)を見たことがきっかけだった。「この映画にしか感じられない空気があった。たぶん世紀末感のようなものだったのでしょう。『こんなことができるんだ!』と思いました」
 これまで数多くの作品を手掛けてきたが、一時は自身が「ホラー専門」と見られることに窮屈さも感じていた。「でも最近は得意分野があると周りから意識してもらえるだけでも、すごく幸運だと思うようになりました」
 「人の不安を形にする」ホラー映画には、無限の可能性があると考えている。現在は「村」シリーズ第3弾の企画に着手するとともに、十数人の若手やベテランクリエイターの短編ホラーを配信で公開する計画も進行中だ。
 短編ホラーは現在、脚本の執筆段階。「皆、自分なりに今の状況を表現しようとしている」と手応えを感じている。そのうちの何本かは明らかに新型コロナを意識した内容になっているといい、「無理やり現実を反映させる必要はないけれど、自然と新たなものが出てくる気がします」と次世代のホラー誕生に期待を寄せる。
 一方で、ホラー以外のジャンルを手掛けたいとの思いも強い。今作でも、姉妹や家族の絆を物語に盛り込むなどドラマ部分も重視し、「『犬鳴村』より大人向けになった」との思いがある。
 実は「犬鳴村」後には、舞台原作のコメディーを撮ることが決まっていたが、「犬鳴村」の大ヒットで今作の製作が優先されたのだという。4月にはカルト的な人気を誇る劇画の映像化に挑んだ「ホムンクルス」の公開が控える。こちらは久々の非ホラーとも言える作品で、映像作家としてまだ披露していない引き出しは多そうだ。
 「樹海村」は2月5日公開。(時事通信社編集委員・小菅昭彦、カメラ・入江明廣)
  ◇  ◇
 清水崇(しみず・たかし)=1972年7月27日生まれ、群馬県出身。自身のヒット作を米国でリメークし、ハリウッドデビューを果たした「THE JUON/呪怨」で日本人としては初の全米興行収入1位を獲得。他の監督作に「魔女の宅急便」「7500」「こどもつかい」、日本科学未来館で上映されている「9次元からきた男」など。

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