Pages

Sunday, April 25, 2021

スーパーなのに「18時」閉店!? コロナ禍の「時短時代」を生き抜くヒントを探る - ITmedia

 大阪、兵庫、京都、東京の4都府県を対象に4月25日〜5月11日までの期間、緊急事態宣言が出ました。また、4月20日〜5月11日まで、埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県に「まん延防止等重点措置」が適用されています。緊急事態宣言では酒を提供する飲食店や大型商業施設に休業要請が、まん延防止等重点措置では飲食店などに時短要請がそれぞれ行われます。5月のゴールデンウイークで売り上げをかさ上げしたい店にとっては大打撃です。

 一方、このような時代に業界の慣習を打ち破り、まったく新しい考え方で店舗営業することを決めた企業があります。大手食品スーパーでありながら、競合激戦区にある店舗を18時閉店としたロピア(神奈川県川崎市)です。「時短時代」に小売り・サービス業はどのような発想で経営をしていくべきか。アイデアと決断力が求められています。

「18時閉店」を掲げるロピア小平店

 流通小売り・サービス業のコンサルティングを約30年続けてきたムガマエ株式会社代表の経営コンサルタント、岩崎剛幸がマーケティングの視点から分析していきます。

時短時代の経営とは

 まん延防止等重点措置と緊急事態宣言は規制の範囲が異なりますが、対象となった地域では事業者に時短営業が要請され、住民には移動を制限するよう呼び掛けられることに変わりはありません(詳細な違いについては、政府の公式Webサイトを参照)。

まん延防止等重点措置と緊急事態宣言

 今回の緊急事態宣言は、日本の感染状況を踏まえるとやむを得ない対応だと思います。同時に、今後も同じような規制が繰り返し出てくることも想定されます。

 飲食店リサーチが、21年2月に実施した中小の飲食店事業者向けのアンケート調査によると、飲食業各社は「プラスを増やす努力」と「マイナスを減らす努力」を必死に行っています。

 プラスを増やす取り組みとしては、「デリバリーに力を入れる」や「SNSでの情報発信強化」などがあります。また、マイナスを減らす取り組みとしては、「食材や飲料の大量買い付けでコストダウン」や「全ての経費を見直し、いらないものは解約していく」といった回答がありました。

外食産業では時短を乗り切るためさまざまな取り組みをしている

 しかし、「こうした地道な対策だけで乗り切れるような時代なのか?」と私は疑問を抱いてしまいました。時短要請にその都度対応し、見返りとして補償金をもらう。そんなことが長く続くはずはありませんし、時短要請は飲食業だけでなく全ての小売り・サービス業に今後も関係してくるからです。

 これからは「時短が新常態」と捉えて、時短でも稼げる店づくりをしていく必要があります。

 そんなことを考えていた矢先に、筆者はある食品スーパーの取り組みを知りました。

食品スーパーで時短を新常態にした画期的な店

 食品スーパーのロピアは、首都圏や関西圏で店舗を増やしている業界注目の企業です。同社は、「ロピア小平店」(東京都小平市)を2月にオープンしました。

 ロピア小平店は、JR国分寺駅から車で10分ほどの住宅立地にあります。自動車学校だった土地に新しくできた「アクロスプラザ小平」という商業施設に9つあるテナントの1つとして入っています。住宅地にある小型の商業施設で、ロピアの売場面積は1800平米となっています。どこにでもある平均的な食品スーパーの店舗です。しかし、その営業時間を見て私は驚きました。

 なんと、閉店時間が「18時」だったからです。

 ロピア小平店の営業時間は9〜18時です。これはまん延防止等重点措置が適用されたから一時的に時短にしている訳ではありません。年中この時間です。今どき18時に閉める食品スーパーを聞いたことがあるでしょうか?

 早速、筆者はロピア小平店に行ってきました。4月の平日、16時半ごろ入店したのですが、店内はお客さんでにぎわっていました。驚くべきことに、16時45分時点ですでに店内の青果売り場や精肉売り場では商品が完売していました。他店では17時ごろからお客さんが入り始めて、棚が少しずつ空き始めるのが普通です。同店では、商品の動きが違うことを実感しました。

すでに品切れの青果コーナーと精肉コーナー

 17時45分になると、店内では「蛍の光」の音楽が流れてきました。この時間帯からも入店してくるお客さんが多くいましたが、売り場はすでに閉店モード。商品の整理、バックヤードの掃除などにいそしんでいるスタッフの姿が見受けられました。

従業員が家族と一緒に食事できるスーパー

 ロピアには、どの店にもお客さんを楽しませるようなメッセージPOPが店内に貼られています。店によってそのメッセージは異なるのですが、小平店には次のようなメッセージがあちこちに貼られていました。

 「子供に自慢できる会社を目指しています」

 「仕事の後も家族とご飯を食べられるスーパーマーケット」

 ロピアは、お客さんを全面的に応援するために、働いている従業員も全力で応援するというメッセージです。

店内のメッセージPOP

 これまでの小売業界、特に食品スーパーがなしえなかった「家で家族とご飯を食べる」というライフスタイルを、ロピアは実現しようとしています。それほど食品スーパーは長時間勤務が当たり前で、当日の店じまいから翌朝のオープン準備までやることが多かったのです。どの小売業態と比べても、もっとも従業員がよく働いてきた業界だったと言えます。

ロピア小平店と周辺スーパーの営業時間

 ロピアが出店した小平地区は、食品スーパー激戦区です。住宅が密集しているエリアで、新築マンションも多く、比較的若い顧客層が増えている地区でもあります。まさに食品スーパーにとっては稼ぎどころのエリアとなるため、通常はできるだけ休まずに長い時間営業をしたくなるものです。

 実際、ロピア小平店周辺にあるスーパーは、全て21時以降に閉店します。もっとも近隣にある大型スーパーのサミットは、24時までの営業です。従来通りの感覚では、仕事終わりの顧客の利便性を考えたら、遅い時間まで営業するものです。営業時間を伸ばすと、売り上げ増にもつながります。

コロナで生活が激変

 しかし、コロナによって人々の生活は激変しました。在宅勤務が増え、外出が減りました。出社しても、定時に終了してそのまま帰宅するビジネスパーソンも増加しています。遅い時間まで店を開ける必要が徐々になくなってきているのです。

消費者の購買行動が変化

 実際、全国スーパーマーケット協会が調査したデータによれば、感染拡大後には食品を購入する時間帯が平日・休日共に早まっています。19〜22時台の買い物が減り、午前中からお昼までに買い物をする人が増えています。平日では、混みやすい夕方の時間帯を避ける傾向も見られます。

 このようなライフスタイルの変化に対応するなら、今がチャンスと同社は考えたのでしょう。また、閉店時間が早ければ、パート・アルバイトの募集がしやすくなるメリットもあります。

 閉店時間を早めた分、朝は9時にオープン。営業時間内に全力を尽くすという店内POPのメッセージ通り、社員の働き方もより効率的になります。実際、小平店の従業員の動きはスピーディーでした。そして、売り上げを伸ばすため、閉店ギリギリまで「もう一品の品出し」に励むスタッフの姿も見受けられました。短時間での営業は働き方にも好影響をもたらしているようです。

 また、同店は「ロープライスのユートピアを作る」と理念に掲げている通り、驚くほどの低価格で商品を販売しています。生鮮三品の品ぞろえは圧倒的に強く、日配品でもPB商品をグループ会社が作るなど、さまざまな方法で低価格を実現しています。結果的に、値引きをほとんどしていません。

 多くのスーパーマーケットでは、閉店1時間前になるとスタッフが値引きシールを貼って商品の売り切りに入ります。ロスをなくすためです。一方、ロピア小平店は閉店間際になっても、値引きシールを貼る光景がほとんど見られません。つまり、作業のムダがないのです。余分な作業から解放されているので、スタッフは本来の業務に集中でき、効率よく仕事を終えられます。スタッフの生産性という点でも、時短は効果がありそうです。 

18時閉店を可能にしたのは生産性の高さ

 ロピアの業績は絶好調です。過去にこの連載で紹介したヤオコーやコストコと比較しても、ロピアはダントツの売り上げ伸び率を示しています(ロピアは詳細データをほぼ公開していないため、売り上げだけの比較)。

 また、正社員1人当たりの売上高で見ても、ロピアは圧倒的に高い生産性を実現しています。

 現在、ロピアは首都圏を中心に58店舗を展開しています。21年度のデータを見ると、1店舗当たり36億円の売り上げです。1年間営業していない店舗も含めているので、実質的には1店舗当たり40億円程度の売り上げと見ていいでしょう。同業であるヤオコーの1店舗当たりの売り上げが25億円なので、高い水準です。

数字で際立つロピアの強さ

 ロピアには「楽しく感動できる、愛に満ちた愛されるお店です」というモットーがあります。お客さんに愛されるためにも、従業員がワクワク働ける店を作ろうという姿勢が見て取れます。

 働く従業員のES(従業員満足度)を上げることで、営業時間内に集中して仕事に取り組めます。そして、CX(顧客体験価値)を上げる店をつくることで、結果的にCS(顧客満足度)が向上するのです。

 もちろん、まだロピアも小平店以外では20時あるいは21時閉店の店がほとんどです。しかし、他社よりは閉店時間が早いのが特徴です。小平店の動向次第では、他のロピアも18時閉店に移行する可能性もあるでしょう。同社では閉店時間を思い切って早める店をつくることで、時短時代の新しい小売業の働き方に挑戦しているのです。

 営業時間を短縮するということは、過去の常識からすると売り上げを減らす選択であり、通常では考えられない決断です。しかし、売り上げを追うのではなく、正しい働き方で適切にもうける店づくりへのチャレンジだと筆者は受け止めています。

 「ニューノーマルの経営」などと表現するビジネスパーソンは多いです。しかし、ロピア小平店のように、何が新常態なのかを考えて、具体的な行動に移している企業はまだ少ないように思います。新しいライフスタイルに対応した小売り・サービス業の在り方をロピア小平店に見ました。みなさんも今までの常識を根底から見つめ直し、時短時代に対応したオペレーションを開発していくべきではないでしょうか。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

 1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


Let's block ads! (Why?)


からの記事と詳細 ( スーパーなのに「18時」閉店!? コロナ禍の「時短時代」を生き抜くヒントを探る - ITmedia )
https://ift.tt/2S2VmWN

No comments:

Post a Comment