ヘアピンのように髪の毛に装着し、振動と光によって音の特徴をユーザーに伝える新しいデバイス「Ontenna」の開発者である富士通の本多達也氏は、「夢を実現させるためには、周りの“共感”を生み出すことが大切」と言う。多くの人々を巻き込み、動かすための「共感」を生み出すヒントを紹介する連載の第5回は、「ユーザーと共に創る」ことの重要性について。
前回の記事では、「笑顔を創造する」ということについてお話しさせていただきました。映画、狂言、音楽会、タップダンスなどのイベントで、誰に対してどのようにOntennaを使えば「より多くの笑顔が生まれるのか」を考え、実践していくことで共感を生み出してきました。今回は、ろう学校の先生や生徒たちと行ってきた「ユーザーと共に創る」ということについてお話ししたいと思います。
入社して2年ほどたった頃、私はデザインセンターからマーケティングの部隊へと異動になりました。Ontennaを製品化するには単に「いいね!」と言ってもらえるだけではなく、ビジネスとして成立させなければなりません。そこでマーケティングの人たちと協力しながら、Ontennaの製品化を本格的に検討し始めました。
まず、製品化に向けて「Ontennaが誰のためのものなのか」をはっきりと定義する必要がありました。誰にでも使えるものは、誰も使えないものになってしまう恐れがあるからです。サービスでもプロダクトでも、使ってもらう人の顔をはっきりとイメージできなければ、形や色、素材や機能が定まらず、誰にとっても魅力的ではないものとなってしまいます。
Ontennaには、エンターテインメント分野で臨場感や一体感を演出するもの、高齢者のリハビリテーションにおいて使用するもの、近づいてくる車に気づかせるような安全安心をつくるものというように、様々な可能性があります。「あれにも使える」「これにも使える」という意見が飛び交う中で、Ontennaを誰に一番届けたいのか、原点に立ち返って考えてみました。そのとき、最初に頭に浮かんだイメージが、笑顔でOntnennaを使ってくれているろう学校の子どもたちの姿でした。
幼少期にリズム感を獲得することは運動神経や脳の発達、作業の効率化やスピード向上においても大変重要です。例えば、箱に荷物を詰めて蓋を閉め、テープを貼るという一連の作業。健聴者の場合は何度かやると段々と作業が速くなってきますが、ろう者の場合はリズム感を獲得できないために、なかなかスピードが上がらないことがあるそうです。
また、発話練習においても、なるべく早い幼少期に「声を出す」ということに慣れる必要があります。Ontennaが最も役立てるのは、そんな場面ではないか。そう考え、まずはターゲットをろう学校の子どもたちに絞りました。「ろう学校の子どもたちに本当に使ってもらえるものを作る」という目標を立て、全国のろう学校と共にテストマーケティングを開始したのです。
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