ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店に戻る。ビジネス街の人出は回復基調ではあるが、新型コロナウイルスで新たな変異型が見つかったことでまた逆戻りしかねない懸念が広がる。そんな中、書店員が注目するのは、シリコンバレーのコンサルティング会社CEO(最高経営責任者)による努力を最小化して成果を最大化する方法を説く本だった。
■『エッセンシャル思考』の続編
その本はグレッグ・マキューン『エフォートレス思考』(高橋璃子訳、かんき出版)。副題に「努力を最小化して成果を最大化する」とある。著者はコンサルティング会社でCEOを務め、2014年、最小の時間で成果を最大にする方法を説いた『エッセンシャル思考』が一躍ベストセラーとなった。グーグル,アップルなど多くの著名IT企業のコンサルティングを手がけるほか、前著刊行以来、ブログやポッドキャストなどでも人気だという。 本書は『エッセンシャル思考』の続編ともいえる内容で、著者自身、エッセンシャル思考は「何を」やるかを教えたもので、エフォートレス思考は「どのように」やるかを極める技術だと位置づける。努力や頑張ることに大きな価値を置く考え方をひっくり返してくれる一冊だ。 著者は超一流の金融機関で週80時間も働いて成果を上げ続けていたのに、その企業が破綻し、ベッドから起き上がれなくなった人物の話から本書を語り起こす。その人物はそこから生き方を変えて定時で帰宅するようになり、睡眠時間も増やし、運動も始め、食生活も改善した。「仕事というより、趣味みたいな生き方です」。そう語る彼は役員としてではなくコンサルタントとして会社に残ったのだが、生き方を変えたことで労働時間は半分、投資も手がけて収入も増え、ストレスも減り、仕事のやりがいも増えたという。 そして頑張りすぎの読者に向けてこう呼びかける。「頑張らないのに結果を出す。いや、頑張らないからこそ結果が出せる。正しいやり方さえ見つければ、人生の重荷は軽くなり、余裕で大きな成果がついてくる」。「いちばん大事なことをいちばん簡単にやるにはどうするか?」。この問いに答えるべく、著者は多くのヒントを本書に投げ込んでいく。 全体は3部構成。まずエフォートレスな精神を手に入れるための実践的な方法を紹介するのがパート1。パート2ではエフォートレスな行動、やるべきことをなるべくシンプルに、簡単にやり遂げる方法を紹介する。パート3で取り上げるのはエフォートレスのしくみ化。累積的に成果が積み重なる方法を示していく。
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