積水化学工業は、一般に接着が難しいとされるフッ素樹脂への接着が可能な粘着テープを開発した。ムール貝の分泌物の構造を模倣した化合物を粘着材に添加し、テープの形状に仕上げた(図1)。フッ素樹脂だけでなく、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの難接着材料にも使える。2023年度の発売に向けて、サンプルの提供を通じた市場開拓を進める。
* 積水化学工業のニュースリリース: https://www.sekisui.co.jp/news/2022/1375522_39136.html開発に当たって同社は、ムール貝の分泌物であるポリフェノール成分がさまざまな材料に接着するという現象に着目。ポリフェノール成分を分子構造中に組み込んだ化合物を設計し、それがフッ素樹脂に粘着可能なことを見いだした。この化合物を活用した粘着テープは、例えばフッ素処理したフライパンにも接着できる。粘着剤の種類を変えれば、低誘電性などの機能を持たせられる可能性もある。
従来、フッ素系材料の表面の接着性を高めるには、プライマーを塗布してから粘着テープを貼る必要があった。この場合、プライマーの塗布と乾燥の手間がかかる上、プライマーとの相性によっては接着が不十分になる恐れもあった。それに対して開発品は、プライマーが不要。従来に比べて工数を減らせる上、安定した接着性を得られる。
厚さが50μmの開発品と同社のアクリル系粘着テープで粘着力を比較したところ、開発品はステンレス鋼とガラス、PP、PE、フッ素樹脂に対して良好な接着性を示した(図2)。特にフッ素樹脂に対しては、アクリル系粘着テープの約10倍の粘着力を発現したとする。
同社によると、近年はさまざまな分野でフッ素樹脂を利用する場面が増えている。例えば通信インフラでは、特に5G(第5世代移動通信システム)・6G(第6世代移動通信システム)における信号の伝送損失を抑えるために、低伝送損失材料としてフッ素樹脂やフッ素変性ポリイミド樹脂などの基盤材料が盛んに開発されているという。フッ素系材料は表面エネルギーが低く、水も油もはじくため、従来は他の材料との接合が難しかったが、開発品によってこの課題の解決が期待できる。
他にも、高周波回路用の基板材料やスマートフォン内部で被覆部品・フィルターを接着する、フッ素樹脂を用いたパッキンを搭載する産業機器においてフッ素系材料周辺を接着する、といった用途への採用を見込む。同社は今後、この接着技術を生かした接着剤やバインダー樹脂の開発も推進して、さまざまな用途への展開を目指す。
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