仮に、自分の死が近いと仮定した場合、どこで最期を迎えたいか考えたことがあるだろうか? 厚生労働省の意識調査では、国民の7割が「自宅で最期を迎えたい」と答えていながら、2020年に自宅で亡くなった人は15.7%でほとんどの人は実現できていない。願望と現実の間にはかなりのギャップがあるのが実情だ。「もしものときは在宅死」の希望を叶えるためにはどうしたらよいのか。首都圏と沖縄県などで21カ所の在宅療養支援診療所を運営している在宅医療のエキスパート、医療法人社団悠翔会理事長・診療部長の佐々木淳氏に、後悔しない最期を迎えるためのヒントを聞いた。
残りの人生をどう生きたいか家族と「人生会議」を
在宅死とは、自宅で看取られることを言い、長年住んだ家だけではなく、高齢者用の住宅などで亡くなることも含まれる。最大のメリットは、「人生の最終段階の時間を、自分の好きなものや家族、ペットなどに囲まれて、やりたいことをやりながら過ごせること」であることを、本特集の1回目ではお伝えした。病院では患者の1人として扱われるが、自宅では、たとえ自由に動き回れなくなっても、家族の中での役割があり、友人、地域や社会とのつながりがある。体の状態にもよるが、好きなものを口から食べて穏やかに最期を迎えることもできる。
ただ、自宅では、病院のように、ナースコールを押せばすぐに看護師などが来てくれるというわけにはいかない。「近くに医療関係者がいないと、患者さん本人やご家族が不安でたまらないという場合には、人生の最終段階が近づいたら、病院に入院した方がいいでしょう。ただし、在宅医療を受けている場合でも訪問診療医や訪問看護師とは24時間連絡が取れるので、医療関係者が近くにいないことをデメリットと感じるかは人それぞれです」
そう話す佐々木氏によると、どんな病気でも「在宅死」が可能だが、実際に自宅で看取られる人が多いのは、がんと老衰だという。がんの場合は、病気が進行して抗がん薬などによる治療ができないような状態になっても、身の回りのことを自分でできトイレへも自力で行けることが多く、亡くなる1~2カ月前に急激に体の機能が低下する。ある程度経過が予測できるうえ介護が必要になる期間が短いので、家族も頑張れることが多い。また、老衰の場合は、徐々に食事や水分がとれなくなって衰弱し、眠ったまま穏やかに息を引き取るので、家族も死を受け入れやすいという面がある。(詳細は本特集第1回をご覧ください)
では、「もしものときは在宅死」を実現するためには、どうしたらよいのだろうか。佐々木氏にそのヒントを教えていただいた。
ヒント1:
元気なときから「最期まで家にいたい」と家族に何度も伝えておく
「まずは、自分が残りの人生をどう生きたいのか考え、日頃から、『自分に介護が必要になっても最期まで家で家族やペットと一緒にいたい』とか『家で死にたい』などと、家族や友人など周囲の人に何度も伝えておくことが大切です。もしも、人工呼吸器は使ってほしくないとか、みんなが支えてくれるなら介護が必要になってもできるだけ長く生きていたいなど、『終活ノート』のようなものに書いてあるなら、その保管場所も伝えておきましょう。万が一、急に倒れて、言葉を話せないような状態になっても、家族は本人がどうしたいか判断しやすいですし、希望を実現してくれる可能性が高まります」と佐々木氏はアドバイスする。
人生の最終段階の医療について家族で話し合ったことはありますか?画像=PIXTA
ただ、そもそも、人生の最終段階における医療・療養についてこれまで考えたことがない人も多いのではないだろうか。厚生労働省の検討会が、20歳以上の男女6000人を対象に2017年末に実施した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」では、「あなたは、人生の最終段階における医療・療養についてこれまで考えたことがありますか」との問いに、37.8%の人が「考えたことがない」と回答し、「考えたことがある」のは59.3%だった。
からの記事と詳細 ( 「もしものときは在宅死」の希望を叶える5つのヒント - 日経Gooday )
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