大会の中で、もっとも熱い1日となりそうだ。夏の甲子園は18日、準々決勝4試合が行われる。いずれ劣らぬ好カードとなったが、中でも注目は高松商(香川)と近江(滋賀)が激突する第2試合だ。2回戦で2打席本塁打を放つなど高校通算66本塁打の強打者、高松商・浅野翔吾外野手と、甲子園通算10勝に到達した剛腕、近江・山田陽翔(はると)投手(ともに3年)の矛盾対決。日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(62)も、大会最大の焦点と位置づける。
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私は8強で実現したこのカードに、特別なものを感じる。先発に変更がなければ初回、投手山田対打者浅野が実現する。本格派右腕の山田と、右の強打者浅野。高校野球ファンならずとも胸が高鳴る。この大会最大の焦点となりそうだ。
私は甲子園を投げ抜くエースに思い入れがある。ずばぬけたエースを軸に勝ち上がるチームは、必然的にエースが疲弊していく。休養日を設け、日程面で改善は進めているが、それでも投手の負担は大きい。初戦鳴門戦は113球(8回)、中4日鶴岡東戦は149球(完投)。中2日海星戦114球(7回)。そして中2日で高松商だ。
昨夏、今春センバツも見てきた体の強さからすれば、今の山田ならまだ馬力に余力があると見る。そのタイミングでの浅野との対決に、巡り合わせを感じる。
プロ野球界での人脈で情報を探ると、この対戦は特別なスケールで注目されている。この対決は「両者の評価は上がることはあっても、下がることはない」。ほぼ例をみない枠組みで捉えられている。
浅野はスイングスピードが速く強い。インパクトの瞬間にボールに力を加えることができている。体の強さ、体の使い方にその理由がある。選球眼が良く、低めの変化球に泳がない。体を前に出されない。右足にしっかり重心をため、変化球のボール球を見切って見逃している。
香川大会での映像ではミートポイントは前にあり、右手を離しバットを振り上げていた。それが佐久長聖戦では、ポイントが体の近くにあり、大振りせずコンパクトだ。右打者として、浜風の中で右中間最深部に入れた飛距離は、高校生では破格のスケールだ。
佐久長聖戦のスイングを見て、私はさらにレベルの高いボールへの対応を見たいと感じた。それがまさに山田の球威、スライダーとの対戦だ。これ以上の組み合わせはない。山田は重い球質で、ある程度はコースに投げることができる。右打者にはスライダー、左打者にはフォークを決め球に、基本は球威で押す。
鶴岡東戦では序盤に2発を浴び、自分のコンディションと相手の力量を見極め、コース重視、変化球とのコンビネーションで完投した。まず完投を想定し、相手打者の状況を観察しながらギアを上げる、もしくは若干力を蓄える、そういうすべを持っている。真っすぐの球質、変化球のキレともにこの年代では申し分ない。
とりわけ重要視しているのが、2人が主将という点だ。チームを鼓舞し、勝って先に進みたい。個人成績よりも、主将としてチームを勝たせる、そういう意識が2人からよく伝わってくる。となれば、初回の対決に、両主将のぶつかり合いが見えてくる。
山田は力を込めたボールで浅野をねじ伏せにかかり、抑えることでチームに「行けるぞ」とのメッセージを送りたい。一方の浅野は、その真っすぐ、スライダーを打ち、こちらも「打って勝つぞ」と仲間を勇気づけたい。山田が力んで四球ということも含め、この対決には多くのものがかかっている。夏の甲子園でしか見られない、究極の勝負をしっかりと見届けたい。(日刊スポーツ評論家)
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