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Sunday, October 2, 2022

【ヒットのヒント】どこへでも持ち歩ける欧文印刷のノート型ホワイトボード「nu board」|@DIME アットダイム - @DIME

持ち運びができて、ホワイトボードのように書いて消すを繰り返すことができるノート型のホワイトボード「nu board(ヌーボード)」。発売から10年が経ち、サイズやカラーなど新しい試みを次々展開し、累計で40万冊を売り上げている。公私ともに使える便利グッズとして愛されている。

紙製のホワイトボードだというが、いったいどんな製品なのか、そして開発に至った経緯とは――。立ち上げ当初からかかわっている欧文印刷株式会社 企画マーケティング室の汲田丈二さんと第1お客様担当部の長島明音さんに開発秘話を聞いた。

「nu board」っていったいどんな便利グッズなの?

左:長島明音さん 右:汲田丈二さん

ぱっと見は普通のノートにしか見えない「nu board」。触り心地はまさしく紙で、ホワイトボードとは全く手触りも見た目も違う。素材は紙なのに、なんとホワイトボード用のペンやクレヨンで書き消しができる。ホワイトボード部分は、開発時のテストでは書いては消して3000回繰り返しても使える耐久性があったという。

すっと拭えばきれいに消える

汲田さん「弊社にはニスを生かした特許印刷技術があります。それを使った製品のひとつが“消せる紙”。紙にニスを塗ることでホワイトボードのように使えるというもので、もともとは一枚のペラペラの紙で会議の際に壁に貼って使っていただくようなものでした。これを活用して開発したのが『nu board』です」

紙に書いた字を消すことができるのは、ニスを使った特許印刷技術の力

独自の技術を持っていた欧文印刷だが、情報の伝達手段が紙からデジタルに移り、印刷業界全体の売り上げが縮小していくなか、その技術を使い新たなマーケットを創造することが課題となっていた。

汲田さん「そんな折に、“開発型企業を目指そう”という方針が会社から示されたんです。自分たちの技術を使って、なにか商品を生み出す――“消せる紙”に続く新商品をなにか作ろうとなって、みんなでアイディアを出すことになりました。そこで僕が提案したのが“nu board”の企画です」

単に『持ち運べるホワイトボード』とするのではなく、紙と紙の間に透明なシートを挟むことにより、利便性を向上させた。これは、ホワイトボードの情報をそのままに○印や文字を上書きしたいときに使うそうだ。

ホワイトボードの間には透明なシートが挟まれている

汲田さん「ただ、透明のシートを挟むというところまでアイディアがたどり着くのは少し時間がかかりました。“消せる紙”はとってもペラペラで持ち運びには不便です。ノート型にしようというのはすぐに浮かびましたが、白い紙をただ重ねるだけでは足りないな、と。誰でも思い浮かぶしインパクトにも欠けて面白味がない。ノートにすれば持ち運びできるけど、どこかしっくりこなかったんですよね。何かが足りない……そう思っていました」

【ヒットのヒント!】知人のブログに「あったらいいな」が書かれていた

紙に書いた字を消せるだけでもインパクトがあり、ノート風のホワイトボードだけでも十分目新しく注目されそうだが、「面白くない」「しっくりこない」という感覚を無視せずに模索し続けたという。

汲田さん「ある日、知人のブログを見ていたら、“ホワイトボードに上書きできる機能があるといいな”ということが書かれていました。これをプラスの機能にしてみたらどうだろうかと思うと同時に、透明シートをレイヤーとして挟む構造のことが閃きました。

これを組み合わせてみれば面白そうだ! となり、具体的な方向性が見えてきました。そこからは細かな部分を詰めていきました。例えば、ホワイトボードの部分は真ん中に厚紙を使って“消せる紙”でサンドイッチにする三重層に。とにかく持ち運びしやすく、ホワイトボードの機能として人に見せるときに見せやすい商品にするために、ある程度の強度は必要だと思ったからです」

簡単には進めなかった製品化への険しい道のり

イメージが固まったことで、すぐに製品化に向けてスタートした……となるかと思いきや、もしかしたら製品化できないかもという状況までにもなったという。

長島さん「新しいアイディアは生まれたものの、製本が難しかったんです。基本的に製本作業というものは、同じ厚みのものをまとめる作業。普通の書籍は、ページによって紙質や厚さが全く違うということはありませんよね。

しかし、“nu board”は製本する中身の厚さや質がバラバラ。自動化できないため、お願いできる製本会社が限られました」

汲田さん「いくつかの会社をまわったんですが、未知の物なので需要があるかどうかもわからず、最初は全く相手にされなかったんです……。私自身もこれが製品化して成功するという自信はなかった。けれど、これがもし作れたら面白いだろうな! という思いはとても強かったので諦められませんでした」

製本会社の戸を次々叩いていると、“作ってみようか!”と言ってくれる会社が現れた。試作品を10冊ほど作ってもらい、紙袋に入れて自社へと持ち帰った際の感動が忘れられないと汲田さんは目頭を熱くして語る。

汲田さん「ただ、その後また壁にぶつかりました。製造の過程でホワイトボード部にこまかな傷がついてしまうことが多かったのですが、そうなるとインクが傷に入り込んでしまい、消せなくなってしまう。また、ボードが紙製なので湿気や乾燥により歪みやソリが発生することも。ひとつひとつ細かく検品していくと、ベストな商品を安定供給するのはかなりハードルが高かった。最初の頃は100冊作っても使い物になるのは10冊いかなかったくらいです。

“消せる紙”という技術を『ノート』という形で世に出すために、とにかく試行錯誤をしました。2011年の1月に会議でアイディアを出したものが、発売にこぎつけたのは2011年の11月。頓挫もしかけたのでスムーズに進んだとは言えない企画でしたが、“これができたら面白そう!”という思いで突き進んできました。

時間をかけてさまざまな課題を乗り越え発売にこぎつけた結果、十年以上にわたって多くの方に愛用していただける製品に成長して、とても嬉しく思っています」

nu board (ヌーボード)の詳細はこちら

取材・文/田村菜津季

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