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Sunday, January 8, 2023

面白さは「余白」から生まれる!? 人生のヒントとなる一冊 - 朝日新聞デジタル

『リセット発想術 常識のほぐし方』

“面白い”はどこからくるのだろうか?

人によってその基準は異なり、声を出して笑えるようなものを指す人もいれば、自分が決して経験することが出来ないような知的好奇心をくすぐるものを指す人もいる。そして、純粋に「面白くなりたい!」という思いを胸の内に秘めている方も多いだろう。私もそのうちの一人だった。

学生の頃、とにかく面白くなりたくて、多くのお笑い芸人さんのネタを見漁(あさ)り、ネタを文字に起こした。どこで笑いが起き、その笑いが起きたボケやツッコミはどのような発想で生まれたのかをひたすら想像し続けていた。どの芸人さんもテレビの中では輝き、憧れる存在として私の目に映っていた。そしてある時、芸人さんを輝かせている、とある存在に気が付いた。それはテレビ番組である。

番組を制作するためには人員や資金を投じる基準となる“企画”を練る存在がいる。私はここで初めて「放送作家」という職を知ることになる。今回は、放送作家、小山薫堂が2014年に著した『じぶんリセット-つまらない大人にならないために』を文庫化した『リセット発想術』という書籍を紹介したい。

面白さは「余白」から生まれる!? 人生のヒントとなる一冊
『リセット発想術 常識のほぐし方』小山薫堂 (著) ‎ 河出書房新社 792円(税込み)

主な発想術として取り上げられているのは書名にもなっている通り、身の回りに存在する当たり前の要素を「リセット」することだ。とても身近な存在であるコンビニを例にすれば、売り上げをとるために多くの人が必要とするものを効率的な動線と配置で陳列している。それが当たり前だ。その当たり前に少し手を加えて、「誰がこんなものを買うんだ!?」と思われるものを置いてみることでそのコンビニにしかない「個性」が生まれる。そこを目掛けてお客さんが飛び込んできてくれれば、この施策は成功したことになる。

例として和菓子屋のご主人のこんなセリフが収録されていた。

「このもみじの葉っぱのようなお菓子を食べるときに重要なのは、その風景を想像するということ。頭の中で情景を思い浮かべたり、秋であるということの喜びを感じたりすることに価値があるのだから、美味(おい)し過ぎてはいけないのです」

これは少しでも和菓子を美味しくしようと味をつけ加え、装飾してみることを著者が提案したことに対して発せられた言葉だ。本書には面白い企画を生み出すための技術が多く収録されているが、小山さんが何よりも大切にしているのは、それらの技術を活用するための“余白”を常に残しておくことだと強く感じた。安心感のある餡子(あんこ)の味を感じながら秋の情景を想像する“余白”が和菓子にはあるというメッセージなのではないだろうか。

自分の人生の中に余白を設け、その余白の中で当たり前を疑い、新しい価値を生み出せないかを探る。時間や業務に追われながら充血した目で考えられた企画よりも、羽を伸ばして友人と飲みながら出てきた企画の中にこそ“面白い”が隠れているのかもしれない。

面白さは「余白」から生まれる!? 人生のヒントとなる一冊
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PROFILE

鈴木雄大

すずき・ゆうだい
二子玉川 蔦屋家電 ワークスタイルコンシェルジュ
北海道の高校から、二浪を経て都内の大学に入学。本に関わる仕事に憧れ、上京初日から渋谷の書店でアルバイトを始める。
大学卒業後、都内の中高一貫校で教壇に立ちつつ、自分で選書をして売場を作りたいという思いから二子玉川 蔦屋家電に。
今年で6年目。読んでいない本が暴力的に増えていくことが悩み。

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