全国で約100万人に上ると推計される「ひきこもり」の当事者。長期化や高年齢化によって80代の親が50代のひきこもりの子を支える「8050問題」も顕在化する中、対策は急務となっている。誰にでも起こりうるひきこもりの実態や課題、求められる支援とはどのようなものなのか-。静岡市在住の漫画家で看護師でもある広田奈都美さんと共に、市内の当事者家族会や地域で支援に当たる民生・児童委員、行政の専用窓口を取材した。
都道府県や政令指定都市に設けられた「ひきこもり地域支援センター」は、支援コーディネーターらが相談支援や関係機関との連携、居場所提供などを担う。県と静岡、浜松両市を除く県内市町でも相談を受ける窓口の設置検討が進む。
作者から 実態多様 社会で援助を
ひきこもりの親同士が支え合う全国ひきこもり家族会連合会県支部「いっぷく会」の中村彰男会長から「あなたの子どももいつ、ひきこもりになるか分からない」と言われた。「まさか」と笑いながらも、頭から血の気が引く思いがした。当事者の親の方々も「まさか」の連続で今に至っているのだと思う。
「多様性」という言葉が社会に浸透し、私自身も安易に使ってきたが、ひきこもりの中には自らその生活を選んだ人もいるのだろうと考えていた。だが取材を進めるうちに、それぞれの当事者や家族が決して望んでひきこもりを選んだわけではなく、多くはその生き方しかできない自分に劣等感を抱えて苦しんでいることを知った。
一方、自覚なくひきこもりの状態が続き、本人に危機感がないケースもあると聞いた。本人が引きこもる理由も、その家族が抱える課題もそれぞれ異なる。ひきこもりを現象ではなく実態と受け止め、社会や行政は本腰を入れて考えるべきだ。
作者略歴 広田奈都美(ひろた・なつみ) 漫画家。静岡市在住。月刊誌に「ナースのチカラ」、静岡新聞に「あたらしい しずおかさん家」を連載中。看護師でもあり、訪問看護ステーションを運営する。
記者の一言 早期発見へ関係機関連携が鍵
ひきこもりは実態の「見えにくさ」も課題の一つだ。いっぷく会の中村会長は「感覚的には、少なくとも推計の倍に当たる約200万人の当事者がいると思う」と指摘する。
相談窓口はあっても、当事者や家族が支援にたどり着かなかったり、支援を拒んだりする例もある。大人のひきこもりだけでなく、オンライン授業だった大学生が対面授業に切り替わっても外に出られず、ひきこもりとなる相談も増えているという。行政が関係機関との連携を強め、早期発見に向けた継続的な実態把握を進めてほしい。
(社会部・吉田史弥)
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