自分らしく生きるヒントがきっとみつかる。 りんごの木夏季セミナーが今年もはじまります
横浜市都筑区にある保育施設、りんごの木こどもクラブが主催する「りんごの木夏季セミナー」がまもなく始まります。
子どもに関わる全ての大人のための学びの場として毎年開催され、今年で33回目。今年のセミナーの見どころを、りんごの木保育士の中山ちえさんに伺いました。
りんごの木こどもクラブは、1982年に、代表の柴田愛子さん、現在は絵本作家として活動する中川ひろたかさん、造形作家の齋藤雅美さんという、当時の保育仲間3人で創設され、今年で40周年を迎えます。
新沢としひこさんやケロポンズの増田裕子さん、平田明子さんなど錚々(そうそう)たるメンバーがこれまでりんごの木の保育士として関わり、今もそのつながりの中からさまざまな活動が生まれています。
単に保育としての機能だけでなく、幅広く子どもの文化に関わるりんごの木の中には、子どもと直接関わる「子どもクラブ」いわゆる幼稚園と、保育者や親向けに、講演・講師活動を行う「ワークショップ」、そして現場の声を発信する「出版部」があり、夏季セミナーは「ワークショップ」の活動の一つとして毎年開催されています。
当初、「保育者たちが一緒に学び合うことが大切なんじゃないか」という柴田愛子さんの声で始まった数十人の小さな学びの場は、規模がどんどん大きくなり、20年前より、川崎市高津市民会館を借り、2日間で、延べ1000人の方が参加するまでになりました。
2020年、コロナで開催が危ぶまれた時には、急遽オンライン開催をすることになり、逆に地方や海外など、普段遠方でなかなか足を運べない保育関係者ともつながる良い機会となりました。
ー学び合う、深め合うオンラインセミナーー
この夏季セミナーは、りんごの木の保育士たちが全て手作りで作り上げています。
私は、6年前に子どもがりんごの木に通うようになって関わりを持つようになりましたが、連絡はいつも手書きのお手紙、LINEどころか、メールもあまり使うことがなく何かあれば顔を合わせておしゃべりしながら伝え合う、そんなとてもアナログなイメージのりんごが、急にビデオカメラで撮影し、動画の編集を始め、パソコンを駆使してオンラインでセミナー開催。それも、人に頼むでもなく、全て自分たちで。とてもびっくりしました。
「今までは現場の人が現場感覚で学び合える場をと思っていたけど、やむなくオンラインにしてみたらお母さんたちも聞きやすい。子どもがいても自分たちが学びたい時間に気軽に学ぶことができるから、届けられる層が広がった」というちえさん。講師の面々にも変化が見られます。
この夏季セミナーは、教育学者の汐見稔幸さん、玉川大学教授の大豆生田啓友(おおまめうだひろとも)さん、柴田愛子さんといった保育界の大御所が今の保育、今の子どもを取り巻く環境など、現場の声を語る貴重な場です。
そして、毎年スタッフでミーティングを重ね、今話を聞きたい人、会いたい人をリストアップしてその年の講師が決まります。
昨年中村桂子さんとの対談でお招きした小西貴士さん。通称ゴリさん。
子どもたちがよく知るゴリさんは、りんごの木が毎年年長児の雪あそびで行く山梨県清里にあるキープ自然学校という場で森の案内人としてお世話になった方で、今は山梨県の八ヶ岳にある保育者のためのエコカレッジ「ぐうたら村」を汐見先生と共同開催しているほか、写真家としても活動しています。
今回「人がとりもどしたいもの」というテーマで、現代の子どもたちになくしてほしくない感性や、自然界のことを語るというゴリさん。
ゴリさんのフィルターで見る自然界、いつも見えている風景が変わって見えてきそうで楽しみです。
今回初めて講師として参加する繁延(しげのぶ)あづささん。
私がりんごの木に子どもを入れたいなと思ったのは、この『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)と言う柴田愛子さんの本との出会いがきっかけでした。
繁延さんは、2011年の東日本大震災を機に、今は長崎に家族で移住して暮らしています。
「繁延さんの生き方そのものが面白いの!」と言うちえさん。
ゲームが欲しいという息子さんにダメだと言うと「ゲームの代わりに鶏を飼わせて」と言われて飼い始めたニワトリ。ペットではなく、卵を産ませて小遣い稼ぎ。そのうち旦那さんが本格的に養鶏を始めたいと言い出したり、繁延さんは狩猟に同行し、肉を食べるところまでを描いたエッセイを執筆したり……。本当だ。その暮らしの続きが気になって、ぜひご自身で語られる話を聞いてみたくなりました。
愛子さんの講座では、りんごの木で4、5歳児がほぼ毎日やっているミーティングをりんごの保育者たちでやってみました。
今年のオンラインは子どものことや保育のこと、自分の生き方に思いを巡らせる時間になりそうです。
ーやっぱりリアルに熱量を感じたいー
「この時代に保育をやっている人たちと一緒に場を介することで自分たちも熱量を感じたいと思って」と言うちえさん。
オンラインにしかない良さはありつつ、やはり息づかいを体感できる会場開催にしかない良さもあります。
「にじ」や「世界中のこどもたちが」などで知られるシンガーソングライターの新沢としひこさんも元りんごの木の保育士の一人。
そして、この夏季セミナーも毎年参加の常連メンバーです。
ここ2年、オンラインのみでの開催の時は、新沢さんのトークライブもオンラインでした。しかし、生の音を、その空気感まで伝えたい、肌で感じてほしいという思いが残り、今年は4年ぶりに会場開催を復活させることに。
今年で音楽活動40周年になるという新沢さん。「人生は生きているだけでどれだけ素晴らしいかを歌で伝えていけたら」とのこと。
久しぶりにリアルな場で聴けると思うととても楽しみです。
オンラインでも講師で登場するゴリ(小西貴士)さんが会場開催にも出演します。
会場では、ゴリさんが写真家としてこれまで日々子どもや自然を見つめてきた写真のスライドショー「〜森からのまなざし〜」です。
当日は、クラリネットとハーブの生演奏に合わせて、ゴリさんの写真に添えられたメッセージと共に紹介します。
夏季セミナーがスタートした33年前、初期の学びの場に集った人たちが現在りんごの木を支える保育士として現役で活動しています。
傍目から見ていると、日々の保育だけでも忙しいのに、なぜ、わざわざ仕事を増やし、この夏季セミナーにこんなにも全力で力を注ぐだろうと思っていましたが、ちえさんにお話を伺い、いかにこのセミナーがりんごの木の保育の軸となり、みんながこの時間を大切にしているかを改めて感じました。
子どもとの暮らしはいつだって忙しい。
そんな中で、今目の前の子どものことを、保育に携わる人、子どもに関わる人、子どもを育てる人……それぞれに子どもと関わる大人たちが、子どものいないところで子どものことを考える時間。それは、きっとあらたな学びや発見、ワクワク……そんな五感がフル稼働する時間になりそうです。
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