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Monday, January 15, 2024

中国地域白書 一極集中変えるヒントに - 中国新聞デジタル

 地方から若い世代の流出が止まらない。新型コロナウイルス禍をくぐり抜けた途端に噴き出した人手不足で、東京一極集中がさらに加速しそうだ。そんな局面で、中国地方の手だてを考えるヒントにしたい分析がある。

 中国地方出身の20~40代の約5800人を意識調査し、中国地域創造研究センターなどが「中国地域白書2023」にまとめた。人生の節目で住む場所を選ぶ際に重視するのは、進学や就職先、結婚相手か。それとも「地元にいたい」「地元から出たい」との地域選択か。どちらの希望が強いかを探った。

 例えば、社会に出る若者は「就職したい企業」「働きたい仕事」をまず重視する、と考えがちである。しかし、それは思い込みの可能性が高いと白書は指摘する。大半は地域選択の方を重視し、住みたい地域にどんな仕事や働き方があるかを考えるという。

 「地元にいたい」「出たい」という希望に影響しているのは、地域との関わり、つながりと説く。居心地がいい、自分らしくいられる、自己実現できると感じられるかだと。ウェルビーイング(心身の健康や幸福)の要素と重なるこれらが、地域を選ぶ大きな要因と結論づけた。郷土への愛着といった伝統的な価値観とは異なるというのだ。

 白書は現代の若い世代の価値観や感じ方をデータを基に明らかにした。ここに住んで暮らしやすいのか、希望をかなえられるのか―。シビアに見極めているとも言えよう。

 当事者の視点に立ち、自治体の定住策や子育て支援策、企業の雇用環境、地域の在り方を見つめ直したい。変化に気付き、対応できるかで、明暗を分けそうな情勢にある。

 国立社会保障・人口問題研究所は2100年の推計人口が6300万人に半減するとはじく。昨年末に公表した50年時点の地域別人口は改めて衝撃を広げた。「縮む地方」の姿が鮮明になったからだ。

 46道府県で減少する一方、東京だけ微増。30%以上減る11県の一つは山口で、中国地方の人口を一定に吸収し流出を防ぐ「ダム効果」を担った広島県も20%減と予測する。

 民間の有識者でつくる「人口戦略会議」が先日、人口減少への対策を訴えた提言書で、東京圏に住む若い世代の課題を連ねている。住宅費の高騰や長時間の通勤で自由に使える金や時間は低水準とし、教育費の負担も重いとした。こうした若い世代への構造的なしわ寄せが、少子化と人口減少を進めた現状を映す。

 それでもなお一極集中が加速していく未来像に、危機感を強める時だろう。

 歴代政権は、一極集中是正を掲げて10年になる「地方創生」や、ようやく本腰を入れる少子化対策でも、労働力の確保や社会保障の維持という目的を前面に出してきた。多様になった個々の価値観を、施策に取り入れる視点は乏しい。地方こそが打開策の道筋を示せるはずである。

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