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Friday, February 23, 2024

障がい者向けに古着リメーク 育児の困りごとヒントに、ブランド設立 - 毎日新聞

自身がリメークした障がい者向けの衣服を手にする坂井うららさん=愛知県豊田市で2024年2月14日午後0時46分、酒井志帆撮影 拡大
自身がリメークした障がい者向けの衣服を手にする坂井うららさん=愛知県豊田市で2024年2月14日午後0時46分、酒井志帆撮影

 障がい者の衣服に関する困りごとを解決したい――。坂井うららさん(44)=愛知県豊田市=は1月、障がい者向けのファッションブランド「vivaclu(ヴィバクル)」を立ち上げ、オンライン販売を始めた。商品はすべて、廃棄される古着をリメークした一点ものだ。

 きっかけは、ダウン症の長男(7)を育てるなかで気付いた困りごとだった。長男は健常者と比べ手足が短く、既製品ではサイズが合わない。子育てに手いっぱいで丈詰めをする余裕は無く、シャツの袖やズボンの裾を2回折って着せることが習慣になっていた。そのため袖や裾部分が窮屈になり、知的障がいもある長男は一人で脱ぎ着ができなかった。

古着のシャツの袖は短くできるようリメークした=愛知県豊田市で2024年2月14日午後0時35分、酒井志帆撮影 拡大
古着のシャツの袖は短くできるようリメークした=愛知県豊田市で2024年2月14日午後0時35分、酒井志帆撮影

 「困っているのは、うちだけなのか」。そんな疑問から、SNS(ネット交流サービス)を使って障がい者や、その家族らにアンケートをしてみると、7割以上が「袖を折っている」と回答。服の前後ろが判別できないなど、障がいの種類や程度によって悩みも千差万別だった。

 車いすに座ったままでもはきやすいズボンなど、障がい者向けの衣服は販売されているものの、値段の高い商品が多く、細かいニーズへの対応も難しい。「一人一人の声を聞いて、いろんな障がいをカバーし、おしゃれを楽しんでもらいたい」と意気込む。地域などで回収した古着を再利用しているのは、衣料品が大量廃棄され、環境に悪影響を及ぼす現状を変えたいとの思いからだ。

 現在は、袖や裾を八分丈に短くした商品をメインに販売。他にもズボンのウエスト部分を伸縮素材に変えたり、前後ろを区別するためポケットやレースを付けたり、リメークしたオリジナル商品を展開する。古着のため原価がかからず、販売価格は800円からと手ごろだ。

 元々ファッション好きで、高校卒業後は米ニューヨークへ渡り、8年あまりを過ごした。インターンシップで働いたアパレルブランドでは、デザインのスケッチやファッションショーの手伝いを体験したが、洋服を作るのは初めてだ。技術力を身につけたいと、週1回、洋裁学校に通う。

 昨春から特別支援学校へ入学した長男を、車で往復2時間かけて毎朝送っており、子育てをしながら、一人での事業展開に難しさも感じている。ゆくゆくは、日常的に子供の服をリメークしている障がい者の母親らを巻き込んで、商品数を増やしたい考えだ。

 長男は、丈詰めした服を一人で脱ぎ着できるようになった。ブランドを立ち上げたのは、障がい者に届けるためだけではない。「困っている人がいることを知ってもらい、新しく服を作る人たちがちょっと工夫するだけでも、世の中に多様性の服が増える」

 ブランド名「ヴィバクル」は、viva(生きる)と、インクルーシブ(包摂的な)をかけ合わせた造語。願うのは、皆が心を寄せ合い、障がい者が今よりもっと生きやすくなる社会だ。【酒井志帆】

さかい・うらら

 1979年、和歌山県新宮市生まれ。バンドマンの夫と結婚し、約10年前に愛知県豊田市へ移住。長女(9)、長男と山間部の下山地区で4人暮らし。リメークした衣服は、「ヴィバクル」の公式WEBサイトで購入できる。同サイトやSNSで、障がい者の衣服に関する困りごとの情報を募っている。

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