香港理工大学と華南理工大学の研究チームは、科学を利用した古典的な玩具に着想を得て、水の蒸発で電子機器を駆動する発電機を開発した。水の蒸発を利用した従来技術と比べて、はるかに高い100V以上のエネルギー出力が可能だ。研究成果は、『Device』誌に2024年3月14日付で公開されている。
新しい発電装置のヒントとなったのは、「水飲み鳥」と呼ばれる昔から存在する玩具だ。振り子のように体を揺らして、目の前にある水にくちばしが触れるのを繰り返す。
水飲み鳥は、頭部と胴体部に見立てた2つのガラス球が、首に見立てたガラス管でつながった形状をしている。胴体部には液体の塩化メチレンが満たされている。頭部はフェルトのような素材で覆われており、同素材のくちばしが取り付けられている。液体の塩化メチレンが重いため、水飲み鳥は直立した姿勢で安定する。
頭部を下げてフェルトを水で濡らすと、直立した水飲み鳥の頭部の温度が水の蒸発の気化熱によって冷やされ、頭部の気体が液化し体積が減る。これによりガラス内の圧力差が生じ、液体の塩化メチレンが胴体から頭部へと吸い上げられ上昇する。重心が上がることでプラスチックの脚で支えられている水飲み鳥は前方へと傾く。十分に傾いてガラス管の下端が液面から出ると、頭部と胴体部の液体がガラス管で接続され、頭部の液体は胴体へと移動し、元の直立した姿勢へと戻る。傾いたときにくちばしが水に触れることでフェルトは常に濡れており、気化熱が発生する限り、水飲み鳥は繰り返し動くことができる。
開発した水飲み鳥式摩擦帯電水力発電装置は、蒸発エネルギーを機械エネルギーに変換してから電気に変換することで、効率的に発電する。機械エネルギーに変換するために、水飲み鳥の両側に摩擦帯電型ナノ発電機(TENG)モジュールを配置した。摩擦による発電速度の低下という課題には、TENGモジュールの電解移動材料としてパターン化した繊維を貼付することで克服した。この水飲み鳥発電装置は自然環境で100V以上の電圧を発生し、液晶ディスプレイ20個、温度センサー、電卓などの小型電子機器に電力を供給することができた。
研究チームは、より効率的に水の蒸発を電気エネルギーに変換するために、市販の水飲み鳥を利用するのではなく、新たに水飲み鳥に似た部品を製作する予定だ。さらに、最終的には日常生活で使用できる実用的な製品を開発したいと考えている。
関連情報
An electricity generator inspired by the drin | EurekAlert!
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