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自動運転やMaaS(Mobility as a Service)への取り組みを開始してから、数社がサテライトオフィスを新たに開設した─。そんな地域が長野県にある。人口6万5954人(国勢調査基準の2024年3月1日推定値)の塩尻市だ(表)。
表 長野県塩尻市の取り組みが示唆する地方版MaaS成功のヒント
地域人材の活用、および自動運転の実証実験やMaaSだけではなく様々な取り組みと連動させることを意識。それらによって好循環を生み出している。(出所:塩尻市への取材を基に日経Automotiveが作成)
塩尻市における自動運転・MaaSに関する取り組みの特徴 |
自動運転やMaaSに関連する業務に地域人材を活用 |
MaaS運用コストの低減や地域人材のデジタルスキル向上に寄与 |
自動運転の実証実験やMaaSだけではなく、様々な取り組みと連動させることを意識 |
同市は、移動課題の解決を目指し、2020年度に自動運転の実証実験を開始した(図1、2)。だが、自動運転だけでは移動課題の解決は現状では難しいとの判断から、乗りたいときにアプリや電話で呼べる人工知能(AI)活用型乗り合いバス(オンデマンドバス)サービス「のるーと塩尻」の実証実験・社会実装へと取り組みを拡大させている(図3)。
現在は、定時定路線バス「すてっぷくん」のうち、市街地を走る路線に対して、徐々にのるーと塩尻への移行を図っている段階。自動運転バスの実証実験も継続している。将来的には、オンデマンドバスの利用者の多いルートは、定路線化して自動運転化することも視野に入れる。
同市の取り組みで注目したいのが、自動運転やMaaSへの取り組みが好循環を生み出している点である。地方版MaaSで往々にして課題になるのは、経費に見合った効果を上げにくいこと。採算が取れずに廃止や減便を余儀なくされた地域の公共交通機関に代わる生活の足として導入されても、地域の財政を圧迫してしまっては継続は難しくなる。
だが、MaaSが生み出す効果は、人やものを運ぶことだけではない。人の移動増によって地域の商店が潤ったり、地域住民の健康状態が改善されて医療費を低減できたりと、様々な付随効果を生み出せる可能性がある。それが実現できれば、MaaSはより大きな恩恵を地域にもたらし、ひいては費用以上の効果を生む可能性を持つ。
実は、そのためのヒントが、今回紹介する塩尻市における自動運転やMaaSへの取り組みにある。中でも、特に重要と思われるのが、地域人材を生かしている点と、自動運転の実証実験やMaaSだけではなく様々な取り組みと連動させている点である。
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