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Thursday, May 16, 2024

[キラリ 成長のヒント]大工集団、組織改革で育成 - 読売新聞オンライン

 昨年12月のコラムでは、テロワールの概念を建築に取り入れている建築設計事務所を取り上げた。ワイナリーの新築において、風土、気候、土壌、地形を設計に かし、材料も地産地消を心掛けていた。そして、施工も県内の業者にお願いした。

 その施工を担当したのが「丸正渡邊工務所」。複数の大工が所属する大工集団である。大正後期に渡邊泰造氏が大工業を始め、東京で活動していた。その後、1961年に2代目の正二氏が甲府市で渡邊工務所を創業し、86年には法人化して社名を株式会社丸正渡邊工務所に変更した。そして、現在は4代目の正博氏が社長を務めている。

 正博氏が家業を手伝い始めたのが2012年、社長に就任したのが16年である。社長就任までの4年間は、経営の現状把握に努めたが、その一方で、12年には大工の正社員化をスタートさせた。現在では、10人の大工が社員として働いている。

 個人事業主として働くことの多い大工を社員として雇うことで、経営に安定は生まれるものの、チームとしての意識をいかに醸成するかが重要であった。そこで、正博氏は、会社のミッション(使命)とビジョン(将来展望)を作成し、社内に浸透させてきた。

 ミッションは「造る、建てるを通じて六方よしの実現に貢献する」であり、ビジョンは「技術とチームワークで山梨一の大工集団となる」である。今では、大工間での助け合いなどが生まれてきているという。今の時代に即した組織改革である。

 また、正博氏が家業を手伝い始めた頃は、仕事の約9割が下請けであり、価格も抑えられ、需要も不安定であった。そこで、発注者から直接仕事を請け負う「元請け」としての仕事を増やしていった。今では、売り上げの半分以上は元請けの仕事だという。最初は設計等は外注していたが、その後内製化を目指し、今年度は、設計部門新設のために経験者の中途1名と建築学科卒の新卒3名を採用した。

 課題としては、全国的な傾向であるが、大工のなり手が不足していることであろう。それでも、ここ数年は1年おきに高卒を採用し、最近では大卒の採用も行っている。

 成長より持続を優先し、地域にとって必要な存在になることを念頭に置き、地元で大工を育てていくことを目指している。山梨一というより、日本一の大工集団を目指してほしい。

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