スポーツの力は偉大だ。今さらそんな当たり前のことをと思われるだろうが、親子の絆、地域の活性、新しい教育の可能性などを感じさせる、オリジナリティあふれる新たなスポーツの胎動を今回はご紹介したい。
以前から懇意にさせていただいているあんぱんで有名な木村屋總本店の木村光伯社長とある日、食事を共にしていたら、こんなアイデアを話してくれた。
「パン食い競争をちゃんとした競技にして公式大会を開こうと思う」
ユニークなことを思いつくなと話を聞いていると、400mハードルでオリンピックに3大会連続出場した為末大さんも一緒に本気になって主催者として参加してくれるのだという。パンをつるすひもの長さなどのオフィシャルルールもきちんと定めて、大会のためにCOREDO日本橋の路面会場を押さえたとのこと。想像以上に本腰を入れていて驚いた。
実際の初回大会が行われたのは4月。当日会場はたくさんの人であふれ、大人も子どもも交ざりながら本気になってパン食い競争に熱中していた。コースは30mほどの長さで熱戦が繰り広げられたわけだが、何と今回の大会記録(世界記録)は為末氏ではなく、中学1年生の少年が勝ち取った。大人も子どももメダリストも一緒になって競うことができるという枠組みが、スポーツを通じた絆の強化や平等性を体現しているように感じられて、昔から誰もが知っている「パン食い競争」の新しい可能性を感じた。
今後はより競技フォーマットを整えて、全国の地域で地元のパン屋さんが主催者になって開催されるという。ゆくゆくは、世界各地のご当地パンでいろいろな国に広がることもビジョンとして描いているとのこと。とても楽しみな話だ。
監督は置かず、小学生自身が考える
もうひとつ、大きな可能性を感じる新種目が「4v4」だ。プロサッカー選手である本田圭佑氏が開発し、2023年の8月に初めての大会が開かれた新種目である。フットサルよりも1人少ない4人制のミニサッカーで、参加できるのは育成年代の小学生。U10(10歳以下)と今年からはU12(12歳以下)も増やした。面白いのが一般のサッカーと違い、監督を入れるのはNGで、戦術や選手交代なども全部選手である小学生が考えなければならないこと。また、全国で毎週のように開かれる大会には、負けたとしても何度でも参加でき、参加するたびに勝ち点をためていくことができる。勝ち点が多い上位チームには、年末に開かれる全国決勝大会への参加権が付与される仕組みになっている。
小学生が自分たちの頭で考え、試すことができるプロセスはとても良い教育になっていると感じる。また何度もチャレンジできる仕組みによって、若いうちから「挑戦する」という行動慣習を身につけることができるのも素晴らしい。また、「監督をおかない」というルールによって自然と各チームにリーダーが生まれていて、リーダーシップやフォロワーシップも学べているのも面白い。こうした環境が今までは見逃していたような才能の発掘につながり、未来のサッカー界を引っ張るスーパースターを輩出することもあるだろう。新しい教育の仕組みとして、とても可能性を感じる。昨シーズンは大成功に終わり、既に2年目となる新シーズンが始まっている。先日、4v4 アジアカップ2025を日本で開催することも宣言され、注目度を増している。
オリンピックやワールドカップ、プロリーグ等を頂点とする種目とは異なる楽しみ方ができる、こうした新しいスポーツが拡大し種類も多彩になれば、豊かな社会の醸成に向かう一助となりそうだ。
なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。
からの記事と詳細 ( パン食い競争に4v4。新スポーツがもたらす成長のヒント - Forbes JAPAN )
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