“瞳の中の星”を描ける楽しみ 今やすっかり廃れてしまった少女漫画ならではの技法
笹生最初から、5人の先生方のエピソードで構成しようと考えていました。プロットの段階でまず許可をいただき、ネームを起こしてまた確認してもらって、という段取りです。中にはやっぱり、描かないでほしいと言われたエピソードもあったのですが、私がぜひ描きたいと思っていたことが実現できて、ありがたく思っています。
──制作の上でのご苦労などは。
笹生しんどかったのは、目が弱っててねえ(苦笑)。それと、自分でもびっくりするくらい画力が落ちているんです。うまくデッサンが取れないし、何度やってもうまく描けなかったんですよね。しっかり描くためには、いろんな道具が必要だろうと、トレス台のいいやつを買ったり、眼鏡を作り直したり…そこからの作業でした。
真っ黒になるまで下書きして、これなら自分で許せる、というレベルで納得できたらペン入れ。基本、昔ながらのアナログ環境ですが、枠線だけはデジタル。稀にそれを見抜く方もいます(笑)。なのでとても時間がかかって、結果的に企画が動き始めてから2年9ヵ月で仕上がったというのが実情です。
──登場する先生方が、それぞれの画風とキャラクターにそっくりなタッチで描かれています。
笹生絵を寄せていく作業は、大変でしたけど楽しかったです。とくに、今やすっかり廃れてしまった技法ですけど、目にホワイトできれいに星を描くといった作業は、たまらなく楽しいんですよ(笑)。絵については、自分の画力ではここまで、という判断はできますが、構成やセリフについては、もっと考えたいと思いながら修正を続けました。もうちょっと意味の通じる言葉にしなくちゃ、とか、ここまどろっこしいからもっとスッキリさせなきゃとか。もっと最適なコマ割りがあるんじゃないか、ここはより印象的な構図にしたいとか。そういう作業には終わりってないんですよね。自分で何度も読み直して、描き直して。ネームだけで丸1年かかりましたから(苦笑)。
でも、そういうことをすべて、こんなに時間をかけず限られた時間内でできるのがプロの先生方。ネームも絵も、コンスタントにある程度のスピードで継続できる能力が、プロフェッショナルな商業作家としての重要な条件だと思います。
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March 17, 2020 at 10:00PM
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