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Saturday, June 13, 2020

新しい「空飛ぶタクシー」の構造は、渡り鳥にヒントを得てつくられた - WIRED.jp

“空飛ぶタクシー”を開発するスタートアップ企業のベータ・テクノロジーズ(Beta Technologies)が、新しい航空機を6月12日(米国時間)に発表した。スタイリッシュな白い機体が、ヴァーモント州バーリントンからシャンプレーン湖を経てニューヨーク州プラッツバーグまで飛行し、劇的なデビューを飾ったのである。

「Alia」というコードネームをもつこの電動垂直離着陸(eVTOL)機は、ベータ・テクノロジーズが開発してきた小型プロトタイプ機「Ava」の後継モデルである。これまで同社は、Avaによって推進方法を試行錯誤し、小型で電動の垂直離着陸機にまつわる複雑な空力特性についてノウハウを蓄積してきたのだ。

創業者のカイル・クラークによると、Aliaの特徴的な構造とエレガントな形状は、世界で最も長距離を移動する渡り鳥であるキョクアジサシに着想を得ているという。角度のついたトラスが支えるふたつの尾翼、ドラマティックな曲線を描く翼、湾曲した先細の翼端といった特徴がそうだ。アジサシの尾を思わせる尾翼の構造と主翼の配置は、「最初のベースモデルとして非常に優れていることがわかりました」と、クラークは言う。

アジサシのこうした特徴は、非常に効率的な長距離飛行を可能にしている。ベータ・テクノロジーズはこの機体についても、それに近い性能を目指している。同社の主要顧客であるユナイテッド・セラピューティクスは移植用の人工臓器を開発しており、効率性と環境性に優れた流通システムとして同社の機体を使用することを予定している。

長い翼でも揚力を発生

ベータ・テクノロジーズはAliaの性能や仕様について、250マイル(約402km)を飛行できて1時間で充電可能なプロトタイプの製作を目指しているという点を除いて、詳細を公表していない。Aliaの翼幅は50フィート(約15.2m)、離陸重量は6,000ポンド(約2,721kg)になる予定だ。

ただし、披露されたプロトタイプの重量は3,800ポンド(約1,723kg)だった。これはバッテリーやその他の重い部品が取り外されていたからである。

この機体は、水平に取り付けられた4つのローターで垂直方向の揚力を生み、前方に飛行する際は後ろ向きの1台のプロペラで加速する。ローターで揚力の大部分を生むeVTOL機のようにモーターに完全に依存するのではなく、長い翼で揚力を発生させることで、より効率的な水平飛行を実現するのだ。

バッテリーについては既存の技術利用する。都市部や病院、遠隔地にある充電ステーションを含むエコシステムの一環として展開することで、航続可能な距離を延ばす予定という。

ベータ・テクノロジーズは機体を臓器の輸送のほか、商業用や運送、旅客輸送用の“空飛ぶタクシー”への展開を目指している。同社は最近、同業のJoby AviationとともにeVTOLプログラム「Agility Prime」の開発の次の段階に進む企業として、米空軍に選定されている。

風変わりな構造のメリット

機体の風変わりな形状には、眉をひそめる人もいるかもしれない。だが、その推進装置のアプローチはeVTOLの業界関係者の間でさらに大きな話題になりそうだ。

eVTOLの開発者の多くは、離着陸の際に複数のローターが上を向き、水平飛行では前方に傾く「チルトローター」式のシステムを採用している。ベータ・テクノロジーズもAvaについてはそのアプローチをとっていたが、量産機に採用するにはエンジニアにとって複雑すぎることが判明したという。

「わたしたちの第一の目的は、必要なときに必要な場所に確実に臓器を届けるという、第一の顧客のミッションを達成することです」と、クラークは言う。「複雑なシステムを採用することで、地上で長期間修理しなければならない可能性がある機体にするわけにはいきませんでした」

Aliaではチルトローターの代わりに、機体上部に4つのローターを搭載し、後方には水平飛行を加速するためのプロペラを備えている。この方法なら、非常に効率の高いローターを新たに開発する必要があったものの、ふたつの役割をかけもちさせることなく、垂直飛行だけに最適化することができた。

ベータ・テクノロジーズによると、このように機体を簡素化することで信頼性が高まるだけではない。チルトローター式に比べて部品点数が少なくなり、型式証明の取得が容易になってコストダウンが可能になるほか、整備費を抑えることができるという。

推進装置のエンジニアのハーマン・ウィーグマンによると、ローターと水平飛行用のプロペラはそれぞれ単一の役割を担うことから、エンジニアは互いのトレードオフを気にすることなく設計を最適化できるのだという。

「モーターを完全に社内で設計・生産するようにしたことで、機体の用途に合わせて設計を完全に最適化できるようになりました」と、ウィーグマンは語る。彼は2016年にベータ・テクノロジーズの立ち上げに参加するために転職する以前は、GEグローバルリサーチでエネルギー貯蔵システムを設計していた経験がある。

今夏にも次のステップへ

また、ベータ・テクノロジーズは有名な産業部品のサプライヤーからバッテリーセルを購入しているが、バッテリーパックの設計と生産は自社で手がけている。Aliaのバッテリーパックはキャビンの下に設置されて重心が低くなっていることから、機体の安定性のほか、突風や乱気流への耐性が向上している。このことは、普段乗り慣れている機体より小型の機体に乗った“未来の乗客”の乗り心地を確保する上でもひと役買うだろうとウィーグマンは言う。

ベータ・テクノロジーズは今年の夏のうちに、プラッツバーグで垂直飛行から水平飛行に移行する試験を開始したいと考えている。この機体は、すでに最終設計で予定されているスキッドの代わりにランディングギアを使用し、係留状態でのホヴァリングや高速タキシングの試験を実施している。

クラークによると、従来型の飛行機としての飛行特性を把握した上で、ヘリコプターとしての性能を評価し、最終的には両方を組み合わせた試験を実施する考えだという。これと並行して同社は、病院への移植臓器の緊急配送や乗客輸送を確実にこなせる程度まで性能を向上させるべく、飛行制御システムや電子機器類、電力管理ソフトウェアを開発しているところだ。

※『WIRED』による“空飛ぶクルマ”の関連記事はこちら

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