「団地」と聞いて、どんなイメージを抱くだろう。高度経済成長期の豊かさの象徴か、時代遅れの巨大なハコか。独協大教授の岡村圭子さん(46)は「東洋最大規模」と言われた草加松原団地(草加市)の歩みをたどり、地域のネットワークの構築について考察を続けている。団地研究から見えてくるものとは。(近藤統義)
−松原団地の入居開始は一九六二年。研究のきっかけは。
行政区画に当てはまらないローカルエリアへの関心があった。境界線を引くと「われわれ意識」が与えられるが、東京の谷根千(台東区谷中、文京区根津、千駄木)のように、なぜそこが一括(くく)りになるのかと。松原団地も住民の多くが都内に通勤し、都民という意識があった。団地に隣接する独協大に着任し、記録に残そうと思った。
−団地に対するイメージの変遷にも注目した。
キーワードは羨望(せんぼう)と忌避、偏愛。各地に建設された当初は高所得者が入居する、憧れの的だった。それが老朽化とともに、取り残された人たちが住んでいると見られるようになった。団地マニアが現れ、めでる対象とされたのが二〇〇〇年代に入ってから。「団地妻」という言葉で、エロスのシンボルとする感覚も日本ならではだ。
−建て替えが進んだ松原団地の調査で印象的だったことは。
完成当時を知る大学関係者や住民にインタビューすると、公式の記録に残っていない話がたくさん出てきた。何度も水害があり大変だったとは伝えられているが、子どもが水着で泳いだり、ドジョウが道端ではねたりと楽しい思い出として記憶する人もいた。
一七年に最寄り駅が「松原団地」から「独協大学前」に改称されたことには、複雑な思いも聞かれた。ローカルなアイデンティティーの抹消につながりかねず、駅名変更には大きな痛みが伴うと実感した。
−住民同士の関係性も分かってきた。
団地を地域の結節点とし、内部だけでなく近隣住民やヘルパーなど外の人も巻き込んでネットワークが作られている。例えば、入居開始の十年後に発足した「野ばら会」というボランティア活動は勧誘はしないが、いろんな人が集まり交流を続けてきた。深入りはせず、ある程度の距離を保った都市的で緩やかなつながりと言える。
高齢化や孤独死、多国籍化などは団地に限らず、日本社会全体が直面する課題。松原団地でのさまざまな取り組みが成功したとはまだ結論づけられないが、今後の地域社会をどう維持するか考えるヒントが隠されている気がする。
<おかむら・けいこ> 東京都出身。2004年から独協大に勤務し、14年から国際教養学部教授。専門は異文化間コミュニケーション。近著に「団地へのまなざし」(新泉社)。草加市立歴史民俗資料館で20日、団地研究について講演する(定員30人で、申し込み先着順)。
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