体操男子でオリンピック(五輪)個人総合2連覇の内村航平(31=リンガーハット)が、「最悪」を乗り越える。

新型コロナウイルスの影響で春から延期された全日本選手権兼全日本種目別選手権が開幕した10日、オンライン取材に応じ、「1種目目に鉄棒をやることで、どういう感じになるのか。一番最悪を今回引いたと思っている。試合の気持ち、感じをつかんで入れるか。しっかりつかみたい」と11日から始まる予選を見定めた。

6種目で争う個人総合から、鉄棒1種目に絞る決断をして迎える今年3戦目になる。以前とは異なる準備は必要で、「実験」という言葉どおりに、独自の調整法を模索している最中。では、なぜ、1種目目が「最悪」なのか。

「この前の国際大会で他の種目もやってみて、絞っても結局はオールラウンダーだと感じた。他の器具を触って、個人総合をやるつもりで鉄棒をやると決めました」。

11月に都内で開催された国際大会では他の種目も演技をした後に、鉄棒に臨んだ。そして、H難度の大技「ブレトシュナイダー」も成功させた。逆に鉄棒しか触らなかった9月の全日本シニアでは、ミスが出た。成功と失敗を鑑みた。「鉄棒だけだと鉄棒に必要な筋肉しか反応しない。他をやると、他に刺激が入って動きやすくなる。体操は究極の全身運動なので、何をやるにしても全身に刺激を入れた方が良いと分かりました」。今大会ではあえて「仮想個人総合」を試みるつもりだった。それが1種目目に鉄棒という順番を引いたことで、プランが狂った。

ただ、「最悪」を経験できることは決して最悪ではない。頭では対策をきっちり描く。「サブ会場で鉄棒以外、他の種目をアップして、個人総合をやるような準備をしてやる」と練習場を活用し、1人で試合のイメージを広げて体を整える。

来春には東京五輪代表争いが本格化する。「今回の試合で(調整法を)確立できるかも。やってみて、来年はどうかという感じです。年が明けてから次の試合までには、しっかり確立したものを毎回コンスタントにやりたいので。来年まではすべてが実験と思ってやっています」。1つの検証結果を残して、20年を終える。【阿部健吾】