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Tuesday, November 9, 2021

「傷とともに生きる」 震災ヒントに映画 山本透監督 - 朝日新聞デジタル

 宮城県内を舞台に一本の劇映画の撮影が進行中だ。エンタメ作品を多数撮ってきた山本透監督(52)が、震災で傷つきながらも生きる人々の姿に着想を得て、自主製作で命の尊さに向き合う異色作になる。題名は「有り、触れた、未来」。2023年春に公開の予定だ。

 山本監督は「ブレイブ 群青戦記(脚本)」「永遠の0(助監督)」「グッモーエビアン!(脚本・監督)」などを手がけてきた売れっ子だ。

 きっかけは昨年、仕事をともにした人気俳優たちが相次いで自死したことだった。なぜ救えなかったのかと、思い悩んだ。

 師匠だった故・大林宣彦監督から、昨年4月にがんで亡くなる直前に「お前は余命宣告を受けたら、どんな映画を撮るんだ?」と問われたことも、胸に刺さっていた。

 若者の死をくい止めるにはどうすればよいか。映画人の使命感に火がついた。

 ヒントを探そうと今年3月、震災10年となる被災地を訪ねた。石巻市の大川小では手を合わせた。昔、ロケをした海辺の病院が跡形もなくなっているのに、ショックを受けた。

 監督は、東松島市で出会った伊藤健人さん(28)の話に強く心を打たれたという。伊藤さんは震災の後、津波で亡くなった5歳の弟のため、自宅跡のがれきの中から見つけた青いこいのぼりを揚げた。共感が広がり、毎年3月から5月、全国から届く青いこいのぼり数百匹を、和太鼓の演奏とともに揚げるプロジェクトを続けている。

 「伊藤さんは、心の傷は癒えないけれど、その傷とともに前を向いて生きてゆくんだという。そのメッセージを映画に込めたいと思った」

 それから1カ月ほどでオリジナルの脚本を書き上げた。震災は直接は登場しない。災害で家族を失った父娘、交通事故で恋人を亡くした元バンドマンの女性、末期がんの女性……。いくつもの生と死が、同時進行で描かれる物語だ。

 監督に賛同する俳優たちがスタッフに加わり、自主製作を支える形をとる。出演は、桜庭ななみさん、新人の碧山さえさん、手塚理美さんら。

 10月いっぱい、県内各地で撮影があった。ラストシーンでは、伊藤さんらの協力で800匹近い青いこいのぼりが空を埋め、太鼓が鳴り響く。「亡き人への鎮魂とともに、未来を生きる子どもたちに希望を託す場面になる。生きるっていいことだと思える映画にしたい」。山本監督は話した。石橋英昭

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