『みんな違う。 それでも、チームで仕事を進めるために大切なこと』(岩井俊憲 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は40年近くにわたり、アドラー心理学に基づいた企業研修、セミナー、講演などを行っているという人物。
注目すべきは、さまざまなことが多様化し、フラット化した現代の職場にこそアドラー心理学が役立つと主張している点です。その理由は、大きく3つ。
1. アドラー心理学は「横の関係」を大切にしている
アドラー心理学では、人間関係を「横の関係」でみなすことを大切にしています。
「上下関係」で人間関係をとらえることは、精神的な健全さを失うものと見ているのです。
人間に「役割の違い」はあったとしても、人間に「上下」はないと考えます。(中略)
「上下関係」ではなく、「同じ人間」「フラットな関係」ととらえるのです。
2. アドラー心理学は「建設的」という視点を大切にしている
アドラー心理学では、ものごとを「正しい/間違っている」「良い/悪い」といった視点で判断するよりも、「建設的/非建設的」といった視点を大事にしています。(中略)「建設的」「有益」「役に立つ」という視点をアドラー心理学では最重要視しているのです。
3. アドラー心理学は「共同体・社会への貢献」を大切にしている
さらにアドラー心理学は、「共同体」の視点をとても大事にします。
「共同体」とは、「人間の複数体」の意味で、家庭や会社、地域社会、国家のことなどです。(「はじめに」より)
つまりは現代の職場環境をよりよいものにするために、アドラーのこうした考え方が役立つということ。そんな観点から書かれた本書のなかから、4章「安心・信頼できる職場をつくる」に焦点を当ててみましょう。
チーム内でお互いを信頼・尊敬し合う
昨今、「働かないおじさん問題」をよく耳にします。若手社員よりも高い給料をもらっているのに、まったく働かず、若手社員のモチベーションを下げたり、業務のしわ寄せを若手社員に負担させてしまうような人たちの問題。
そうした人たちのことは、「気にしないのがいちばん、気にするだけ無駄」だと著者は主張していますし、たしかにそのとおりかもしれません。
しかしチーム内において若手社員から、「なんとかしてほしい」という相談や依頼がリーダーに寄せられることもあるでしょう。
その相談や依頼をリーダーが「たしかに。なんとかしなければ」と受け入れたのであれば、それは「共通の課題」。
働かないおじさんが「働かない」ために、若手社員に過度な負担がかかってチームの仕事に大きな影響が出ている場合は「迷惑を被っている」ということになりますから、それもまた、若手社員とリーダーとの間の「共通の話題」です。
だとすれば、そんな「共通の課題」をどう考えていくべきなのかが鍵になるはずですが、それを考える前に大切なベースとなるのが「共同体感覚」なのだそうです。つまり、共同体感覚がある職場かどうかが重要だということ。
「共同体感覚」とは、共同体にいる仲間たちに関心を持ち、その仲間を信じること。彼らの幸せや成長に対して「自分はなにができるか」と考え、貢献する姿勢。また、「ここに居場所がある」「ここにいていいんだ」という所属感をも含め、「共同体感覚」というわけで、それが職場にあるかどうかがキーになるということです。
なお共同体感覚について、アドラーは次のようなことばを残しているそうです。
「個人心理学を学ぶには、何よりもまず『共同体感覚』という概念を理解する必要がある。これは私たちの教育と治療において、もっとも大切なものだからだ。
勇気があり、自信があり、世界に自分の居場所がある人だけが、人生のいいことと悪いことの両方を生かすことができる。『生きるために大切なこと』(149ページより)
共同体感覚をわかりやすく説明する際、こうたとえることがあるのだとか。
共同体感覚とは、「I(私)」ではなく「We(私たち)」という感覚。「Weの中のIである」「チームの一員である」という感覚です。(150ページより)
つまり、「私たちは、どうしたらいいか」「私たちには、なにができるか」と“私たち”を主語にして考えることができる感覚だということ。
もちろん、そこには働かないおじさんも含まれます。働かないおじさんもチームの一員として「お互いに尊敬しあえる」「お互いに信頼しあえる」職場かどうかが「共通の課題」には重要で、そうした職場でこそ「共通の課題」が成り立ちやすいわけです。(147ページより)
「心理的安全性」と「共同体感覚」
近年、ビジネスの場面で話題に出ることの多い「心理的安全性」とは、「チーム内のメンバーが自分の言動を拒絶したり、非難したりせず、ここは安全だと思える状態」のこと。
「生産性が高いチームは、心理的安全性も高い」とされているそうですが、つまり心理的安全性があるチームでは、意見をいいやすく、協力して目標に向かって仕事を進めやすいということです。
「共同体感覚のあるチーム」とは、これに近いもの。共同体感覚があると、「ここに居場所がある」と感じられ、「ここの仲間を尊敬・信頼し、この共同体に貢献しようと思えるため、各人が無理なく力を発揮することができ、成果が出やすいわけです。
だからこそリーダーにとって、部下の共同体感覚を育むこと、共同体感覚のある職場にしていくことが重要であるのです。
「指導の第一の目的は、適切な共同体感覚を育てることだ。健全で有益な目的は、共同体感覚から生まれてくる」(153ページより)
アドラーも、このようなことばを残しているそうで、記憶にとどめておきたいところです。(152ページより)
「ひとりひとり個性の違う人間は、社会のなかで信頼し合い、協力し合い、貢献することで発展・成長する」と考えるアドラー心理学は、働く人の考え方や価値観が多様化した時代にこそフィットした心理学だと著者はいいます。
それをリーダーシップ・チームマネジメントに活かすことができれば、職場環境はよりよいものになるかもしれません。
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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン
からの記事と詳細 ( アドラー心理学をチームマネジメントに生かすヒント〜信頼できる職場に欠かせない「共同体感覚」とは - Lifehacker JAPAN )
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