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Wednesday, January 17, 2024

「幸せ」に働きたい――万人の願いをかなえるヒントとは? - ITmedia ビジネスオンライン

 「幸せ」になりたい。

 これは、万国共通、老若男女問わず、ほとんどの人にとって共通の望みではないだろうか。社会人であれば1日の大半を仕事に費やすことが一般的であることから、幸せに働けるのであればそれに越したことはない。しかし、パーソル総合研究所が2022年に実施した国際比較調査では、働くことを通じて幸せを感じている日本人は49.1%しかおらず、調査対象となった18カ国・地域の中で最も少なかった(※1)。

※1:パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」18カ国・地域(調査都市)
【東アジア】日本(東京、大阪、愛知)、中国(北京、上海、広州)、韓国(ソウル)、台湾(台北)、香港
【東南アジア】タイ(グレーターバンコク)、フィリピン(メトロマニラ)、インドネシア(グレータージャカルタ)、マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、ベトナム(ハノイ、ホーチミンシティ)
【南アジア】インド(デリー、ムンバイ)
【オセアニア】オーストラリア(シドニー、メルボルン、キャンベラ)
【北米】アメリカ(ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス)
【ヨーロッパ】イギリス(ロンドン)、ドイツ(ベルリン、ミュンヘン、ハンブルグ)、フランス(パリ)、スウェーデン(ストックホルム)

 日本人が幸せに働くためにはどうしたらいいのだろうか。昭和の時代には、学歴や収入、出世といった「王道の幸せ」のモノサシがあった。しかし、今は若年層を中心に価値観が多様化しており、幸せのカタチは変化している。

 では、これからの社会を生きる若い世代にとって、何が「幸せ」なのだろうか。そして、若手社会人が幸せに働くためには何が必要なのだろうか。

(写真はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 若手社会人の幸せには、今の仕事だけでなく、学生時代の学習や学内外での活動の積み重ねも大きな影響を与えると考えられる。しかしこれまで、学生時代の教育と社会人の仕事は分けて議論されることが多く、学生から社会人への接続を横断的に捉えた知見は乏しい。

 そこで今回、未来を生きる高校生〜若手社会人が、幸せに働く未来を描き、意欲を持って学びや行動へと向かうための羅針盤を届けることを目的として、「大人の学び」の専門家である立教大学の中原淳教授、教育に関する調査・研究を行っているベネッセ教育総合研究所、働く人や組織に関する調査・研究を行っているパーソル総合研究所の3者が共同で産学連携の研究プロジェクト(『ハタチからの「学びと幸せ」探究ラボ』 )を発足。若手社会人の幸せにつながる学生時代の学びや社会人になってからの経験について探求を行った。

 本コラムでは、プロジェクト内で実施した「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」の結果から、若手社会人が幸せに働くためのヒントを提示したい。

「幸せに働く」とはどういうこと?

 「幸せ」の追求は普遍的なテーマであり、持続的な幸せ「ウェルビーイング(Well-being) 」に関わる研究がさまざまな学問領域で行われている。

 例えば、心理学や経済学、産業衛生学などの研究分野にわたる学際的アプローチであるポジティブ心理学においては、持続的な幸せを構成するものとして「PERMA(パーマ)」と略される5つの要素が提唱されている。持続的な幸せには、Positive Emotion(ポジティブな感情)、Engagement(没頭)、Relationships(人間関係)、Meaning(人生の意味や意義)、Accomplishment(達成)の5つの要素が関係しているとされる(※2)。

※2:Seligman, M. E. P.(2011). Flourish. New York, NY: Simon & Schuster.

 では、実際に、若手社会人は、幸せに働くことをどのように捉えているのだろうか。幸せに働く状態を具体的にイメージするために、われわれは「働いていて幸せを感じる状況」について1600人の若手社会人(25〜35歳)から自由回答を集めた。

 すると「お客さまに喜んでいただけたとき」や「他の社員の仕事を助けて感謝されたとき」「自分のした仕事が何かしら社会の役に立っていることが目に見えて実感できたとき」といった社内外で役に立っている実感を得ることや、「給料をもらったとき」「ボーナスが出たとき」といった報酬をもらうことに関して、幸せを感じている人が多いことが分かった。

 しかし、最も多かった回答は「働いていて幸せを感じることがない」というものであった。なんと約4割もの人が「ない/分からない/考えたことがない」と回答している(※3)。

※3:若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査<高卒・専門学校卒・短大卒編>:学歴別集計結果の単純平均値。

 「そういわれると、思い付かない」というように、幸せを感じていても具体的な状況を挙げるのが難しい人もいるが、働くことで幸せを感じることが「特にない」人が多数を占めていた。中には、淡々と業務をこなしているだけで仕事で幸せを意識したことがない人や、そもそも「仕事に幸せは必要ない」「働くこと自体が幸せではない」「労働に幸せなど存在しない」といったように、仕事と幸せを切り離して考える人もいる。

 働くことを通じて幸せを感じる人が少ないだけでなく、具体的にイメージできていない人が多いのが実情なのである。幸せに働くイメージもできていない人からすれば、幸せに働くことは非現実的な夢のように感じられることだろう。

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