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Friday, May 17, 2024

アジア最大級の広告祭で知るビジネスのヒント|日経BizGate - 日本経済新聞

アジア地域最大級の広告祭「Spikes Asia(スパイクスアジア)」。世界最大の広告祭である「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」の地域版としてスタートし、2024年は3月13〜14日の2日間にわたりシンガポールで開催。24カ国・地域から集まった3189件のエントリーが賞を競ったほか、多数のセミナーが開かれ、世界的なクライアント企業や広告代理店などがアジアでのビジネスや広告コミュニケーションの最前線について発信した。カンヌライオンズやスパイクスアジアで現地ツアーのコーディネーターを務めるSTRATEGY Xの松浦良高最高経営責任者(CEO)に、注目の受賞作やセミナー、そこから読み取れるヒントなどを聞いた。

カンヌライオンズの「アジア版」 表彰やセミナー、交流イベントも

――スパイクスアジアが5年ぶりにシンガポールで現地開催されました。

「もともと1986年に設立された『アジアン・アドバタイジング・アワード』という広告賞があって、それが2009年に『スパイクスアジア』という名称になり、カンヌライオンズの『アジア版』としてリブランドされました。カンヌライオンズと同じように様々な部門の表彰やセミナー、交流のイベントがあるのが特徴です。2020年に新型コロナウイルスの流行で中止となって以降、オンライン開催などが続き、今年は5年ぶりにシンガポールでのリアル開催となりました」

「アジア限定ということで賞への応募数や受賞数はカンヌライオンズには及びませんが、登竜門的な面があり、スパイクスアジアで突出して優れた作品はカンヌライオンズでも受賞することが少なくありません。今回から開催時期も従来の秋から3月に変わり、6月に開催されるカンヌライオンズの『前哨戦』という傾向が強まりそうです」

「一方で、スパイクスアジアは審査員のバックグラウンドもアジアの人やアジアで働く欧米人が中心のため、受賞作が選ばれる視点がカンヌライオンズとは違うというユニークさがあります。成長するアジアの文化を映すアワードとして、今後いっそう重要性が高まるのではないかと見ています」

「ニワトリの歩数を印刷した卵」「同業他社への手紙」

――今回の注目作を教えてください。

「オーストラリアの卵メーカー、Honest Eggs社の取り組み『FitChix』が、『アウトドア』部門や『クリエーティブ・データ』部門のグランプリなど、8部門で12の賞を獲得しています。広い農場で少数のニワトリを飼育するという、ニワトリにも土地にも優しい方法で生産された卵であることを消費者にアピールするため、専用の歩数計を開発してニワトリに装着し、歩数データをそのニワトリが生んだ卵に印刷して販売しました」

「小売店からの新規の仕入れの申し込みが222%増え、供給可能な量の限界に達したそうです。カンヌライオンズと同じように、健康やトレーサビリティー(生産履歴の追跡)など、SDGs(持続可能な開発目標)への人々の関心の高さにうまく訴えたところが評価されていました」

「2部門の受賞にとどまりましたが、マンダリン・オリエンタル・シンガポールの『Letters To Neighbours』という取り組みも興味深いです。2023年に改装する際、休業によるブランドへの影響を抑えるため、近隣のホテルにゲストを引き受けてくれるようお願いする手紙を出し、それがメディアやSNSで話題を呼んだ。現地では『カンポン(村)』で助け合うという文化があるといい、そこから着想して成功につながった好事例といえます」

マーティン・ソレル氏の講演に多くの若手

――世界的な実業家のマーティン・ソレル氏の講演が多くの参加者を集めたそうですね。

「ソレル氏は広告世界大手の英WPPの創業者で、人工知能(AI)をテーマにした講演でした。AIを活用すれば、これまで何カ月もかかってつくっていた制作物を1時間もかからずにつくれるようになる。何億パターンもつくって多様なターゲットに『ハイパーパーソナライゼーション』で届けることも可能になる。効率化を進め、人間ならではのクリエイティビティーを発揮するようにと訴えていました」

「ソレル氏の講演を若い世代が多く聴きに来ていたのが印象的です。今後、業界がどうなっていくのか、自分のキャリアをどうするか。それを左右するものとしてAIをとらえ、ソレル氏の言葉に真剣に耳を傾ける若者の熱気にあふれていました」

「今年はリアル開催の良さを再確認できたように感じます。贈賞式は会期最終日の夜に4時間以上にわたり開催されるのですが、食事をしながら受賞作について意見を交わすことができます。スパイクスアジアは日本のビジネスパーソンにとっては実際に行ったことのある場所、触れたことのある文化にまつわるエントリー作も多く、親しみが持てる面もあるのではないでしょうか。世界的な企業や専門家の話も聞くことができますし、アクセスしやすい国際広告祭としてもっと知られるようになればと思います」

(聞き手は若狭美緒)

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