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Thursday, March 19, 2020

奥川、考える日々が成長のヒントに/田村藤夫氏 - 評論家コラム - 野球コラム - 日刊スポーツ

ヤクルトのドラフト1位奥川恭伸投手(18=星稜)が19日、戸田球場で6度目のブルペン投球を行った。座った捕手には3度目で、53球を投げた。日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(60)がチェックした。

◇   ◇   ◇

2月22日宮崎・西都での立ち投げ以来、久しぶりに奥川を見た。

前回(14日・横須賀)のピッチングを見ていないが、関係者に聞くとバランスが良くなかったということだった。それを踏まえてこの日の奥川を見たが、私はそれほど悪いとは感じなかった。ただ、全力では投げていないことはすぐに分かった。

モーションに入って、足を上げる動作から、体重移動してボールをリリースするまで、ひとつひとつの動きに気を配っているようだった。前回のバランスの課題を修正しようと心掛けているのだろう。力加減はともかく、途中からは捕手の構えたところにボールは集まっていた。

投手というのは調子がいい時は、何も考えなくてもスムーズに体が動く。それが、何かをきっかけにリズムが狂うと、細かい部分をしっかり考えながらフォームに取り組むようになる。はたから見ていると分からない違いでも、投手本人はしっくりいかないということは良くある。

05年に高卒1年目だったダルビッシュを、投手コーチ兼バッテリーコーチだった私は間近で見た。非常にいい状態に見えても、その数日後には、リリースポイントなどをしっかりチェックしながら投げていた。投手が思ったところに投げられている時は調子がいい時で、それができなくなった時は、どこかに原因がある。そして、その原因は本人にしか分からないことはままある。

西都で立ち投げをした時の奥川は、捕手のミットめがけて気持ちよく腕を振っていた。捕手を座らせ、ボールを低めに投げながら、自分の感触と向き合うということは、立ち投げとは別の話になってくる。

この日、ブルペンには高津監督、池山2軍監督、ピッチングコーチ、担当スカウトなど、ヤクルトの首脳陣がそろっていた。中でも高津監督の前でピッチングは初めてと聞いた。その監督が背中越しに自分のピッチングを見ているとなれば、奥川の緊張も相当なことだったろうと思う。

これから、担当コーチからアドバイスを受けながら、そして自分の感覚と重ねながら、納得のいくボールが投げられるようにフォームを固めてもらいたい。

プロの投手の世界では、何の不安もなく自然と体が動く時よりも、どこかに課題を感じ、自分の感触と相談しながら考える日々の方が多いと思う。そして得てして、そういう時にレベルアップのヒントと巡り合えるものだ。(日刊スポーツ評論家)

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