夏の暑い日、白色の衣料を着ると他の色よりも涼しく感じるだろう。これは他の色よりも太陽光を反射する率が高いためだ。他の色、例えば黒色や青色は、赤や緑の光を吸収して発熱するため、暑くなる。これに対して、中南米に生息する「モルフォ蝶」は青い光だけを強く反射する鱗粉のナノ構造によって、光を吸収することなく彩度の高い青色を作り出している。
この光の波長より小さいナノ構造による発色は「構造発色」と呼ばれ、中国深セン大学の研究者らは、蝶の羽のナノ構造からヒントを得て、従来のカラーフィルムのように光を吸収することなく、特定の波長の光を反射して鮮やかな色を作り出すフィルムを開発した。光を吸収しないこの新しいカラーフィルムは温度上昇が起こらないため、建物や乗り物、機器の外側に使用することで、冷却に必要なエネルギーを削減することができる。
モルフォ蝶にヒントを得たカラフルな冷却フィルムを作るために、研究者らは二酸化チタンと二酸化アルミニウムからなる多層材料の下に無秩序な材料(粗いすりガラス)を置いた。次に、この構造をすべての光を反射する銀層の上に配置することで、太陽光線の吸収とその吸収に伴う加熱を防いだ。
新技術をテストするため、研究者たちは青、黄、無色のフィルムを作成し、深セン大学の屋外で、冬と夏の午前9時から午後4時まで、屋根、車、布、携帯電話などの表面に置いた。熱電対センサーと赤外線カメラを使って温度を測定したところ、冷却フィルムは設置した面よりも、冬場は約15℃以上、夏場は約35℃も温度が低いことがわかった。
さらに研究者らは、銀膜をアルミニウム膜に置き換えることで、電子ビーム蒸着やマグネトロンスパッタリングなどのスケーラブルな製造方法で、より安価に製造できると指摘している。研究者らは、このフィルムの冷却性能と色彩性能を実証できたので、今後は機械的/化学的堅牢性など他の特性についても研究し、最適化していく予定だ。
「私たちが開発した層構造により、受動冷却方式を無色の物体からカラフルな物体へと拡張することができました」と研究チームのリーダー、Guo Ping Wang氏は言う。「我々の新しいフィルムでは、どんな色、彩度、明るさでも優れた冷却性能を達成できます。このフィルムは繊維製品に使用することも可能で、暑い気温でも快適な、どんな色の服でも作ることができるのです」とも語っている。
関連情報
Butterfly-inspired films create vibrant color | EurekAlert!
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