「職場がゆるくて、成長実感がないから辞めます」。これまでの育て方が通用せず、会社を離れようとする若手社員に、上司はどう向き合えばいいのか?本連載は、リクルートワークス研究所の主任研究員が、独自調査を通じてZ世代の実像に迫り、効果的な育成ポイントを解説した『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(古屋星斗著/日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。若手社員の定着・育成のヒントを探る。
第4回は、「やりたいこと」が明らかで、キャリアについて自律的な若手社員に、本人も意識していない成長機会をもたらすきっかけのつくり方を解説する。
④本人の合理性を超えた機会を提供する
ハイパフォーマー層でキャリア自律的な若者は、自身の職業生活全体における目標が、具体的であれ抽象的であれ何かしら言語化されていることが多い。企業側も若手にそれを求めるようになっている。その代表的な例が、“ジョブ型採用”や“手挙げ制異動”である。
筆者は、近年多用されるようになってきた「やりたいことは何か」「あなたは何がしたいのか」という言葉が若手におけるキャリアの自律性を問う端的な質問だと考えているが(なお、これの学校バージョンが「なりたい職業は何か」「将来の目標は何か」だろう)、現代の若手社会人は学校にいた頃から何度も何度も「やりたいこと」を聞かれている。
ここではハイパフォーマーでキャリア自律的な若者たちにターゲットを絞って3つの打ち手を紹介してきたが、「やりたいこと」があるという“恵まれた”若者たちのある種の弱点に触れておきたい。それは、「現在地と目標との間にあると本人が認識している機会しか、本人が“機会”と認識できない」 ということだ。
もちろん、これは別に若者に限った話ではない。誰しも目標が明確であればあるほど、その延長線上にない機会はムダだと切り捨てられるものだ。目標があるならば、最短距離を行きたいものだからだ。
しかし、目下、若手育成において大きな潮流となっているのは、その具体的な目標の設定が過去の若手たちよりもかなり早いタイミングで若者に求められているということだ。代表例にジョブ型採用がある。いまや、企業側が一部の学生に対しては入社するタイミングで、“知的財産専門職採用”や“データマーケティング専門職採用”といったかなり具体的な職種で採用をしている。
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