JR東日本など関東の鉄道8社が発表した「QRコード切符」への切り替え。そこで『QRコード』に関するギモンを“生みの親”に聞きました。
元々切符は駅員が手作業で切り込みを入れていました。その当時は朝や夕方の通勤ラッシュには改札に大行列ができることも。そこで混雑緩和のため1990年ごろからJR東日本で本格的に導入されたのが自動改札機と磁気切符。その利便性から一気に全国に普及しました。
現在はICカードが普及して磁気切符の利用者は減ってはいますが、実は関西でもQRコードを使った切符が来週から本格的にお目見えします。
(大阪メトロ広報戦略部 角野功さん)「QRコード読み取り機がついた改札です。スマートフォンに表示されたQRコードをかざすと通っていただけます」
6月17日からQRコード切符として販売される大阪メトロ・近鉄・京阪など関西の私鉄7社の周遊パス、その名も「スルッとQRtto」。QRコードになることで鉄道側にもこんなメリットが。
(大阪メトロ広報戦略部 角野功さん)「磁気券の磁気を読み取る部分のメンテナンスに手間とコストがかかります。QRコードはタッチをするだけですので、電子部品のみで運用できますので、機械的なメンテナンスといった課題は解決できるかなと」
ますます利用が広がるQRコード。一体どんな人が作ったの?毎日大量に発行されて足りなくならないの?QRコードの生みの親・原昌宏さん(66)に直接聞きました!
(原昌宏さん)「(Q切符にQRコードが使われると聞いた感想は?)本音を言って良いですか?やっとそうなったなと」
自動車部品を製造するデンソーの技術部門でバーコードの読み取り機を開発していた原さん。「毎日大量のバーコードを読み取らなければならない製造現場の負担を軽くできないか」と考えたのが開発のきっかけでした。
(原昌宏さん)「自動車業界では油を使うので、バーコードが油で汚れると読めなかったり、最悪は違うデータとして読むことがあるんですね。そうなると作業者も疲れて負担が大きかったんです」
原さんは会社に「2年で完成させるので新しいコードを作りたい」と申し出て、たった2人で開発に乗り出します。原さんたちはバーコードより多くの情報が入る縦・横の二次元のコードを考え出したものの大きな壁に直面。当時のプリンターの性能では正確に印刷できないおそれがあったのです。そこでヒントになったのは意外なものでした。
(原昌宏さん)「昼休みに会社の上司と囲碁をやっていた時に、囲碁は線と線の中心に石を置くんですよね。多少ずれていても打っている人にはわかるんですよね。コードが歪んでいても、我々が得意な読み取り装置側で対応すれば確実に読めるんじゃないかと」
驚きの発見は他にも。正方形のコードの3つの隅に四角い印を配置することで、どの角度から読み取ってもコードの形と向きが識別できるようにしました。
こうして1994年に完成したQRコード。最大でA4の紙1枚分の文章と同じ量の情報(約1800文字)を載せることが可能で、しかも読み取り速度は0.03秒。この夏のパリオリンピックでもテロ対策のための市内の通行証として使われるなど、世界でも活用されるQRコード。さぞかし儲かっているのかと思いきや、原さんが所属するデンソーウェーブはQRコードの特許技術を誰でも無料で使えるようにしています。
(原昌宏さん)「(特許をオープンにしたのは)QRコードを広めようと思ったのが一番です。オープンにしていろんな企業にQRコードを広める協力をしてもらって、インフラ整備をして市場を広げようという考えがあったので。(Q無料にしたから世界で活用されるように?)私はそう思います」
こうして広まったQRコード。ギモンを原さんに聞いてみました。QRコードを“これ以上作れない”ということにはならないんですか?
(原昌宏さん)「どれだけの組み合わせができるかというと、マックスだと10の7089乗なんですよ。期限は何千万年くらいかもしれない。(Q切符などで毎日大量に発行されるが?)問題ないと思いますね」
そんなQRコードの完成から30年。原さんは現在のQRコードの広まりをどう感じているのでしょうか。
(原昌宏さん)「私はエンジニアですから、自分が作ったものがみんなに使ってもらえるのが非常にうれしいもので、エンジニアになってよかったなと。(Q世界に広まったが原さんへのご褒美は?)ボーナスぐらいはあったかもしれませんけど。もし特別な報酬が出ていたら今ごろサラリーマンをやっていないと思います(笑)」
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